医学部入試

医学部志望者は、大学入試全体の話に引きずられてはいけない(2019-08-19)

私は、大学入試の中でも医学部入試を専門
にしています。かと言って、医学部入試し
か見ていないわけではありません。

医学部入試に関する様々なデータは、当然
注意して見ています。医学部入試に関する
様々な記事も読みます。それだけではなく、
毎年発行している「医歯学部入試総括」を
見ていただければ分かるように、大学入試
全体のデータにも注意しています。

そして、大学入試に関する記事も読んでい
ます。

最近も、大学入試に関する記事を読んでい
て、「医学部入試とは、かなり感覚が違うな」
と思うことがありました。

記事の内容は「私立大学の定員厳格化に伴
って、これまでの大学の序列があてになら
なくなった」といった内容です。

日々、大学受験生と接している方が真面目
に書かれた、しっかりした内容の記事です。
この記事の筆者は予備校関係者ですが、大
学受験生全体を見ていて、特定の学部や大
学を見ているわけではありません。普通の
予備校なら当然で、この記事も私立大学全
体の話で特定の学部について語っているわ
けではありません。

私立大学の定員厳格化は、特に3大都市圏
の私立大学が入学定員を超えて学生を入学
させることで、地方の私立大学が学生募集
に苦労し、ひいては都市への若者の集中を
助長している、ということから文部科学省
が定員の厳格化へ舵を切ったことを指し
ます。

2015年度までは定員8000人以上の大規
模私立大学では、入学定員充足率が120%
を超えると補助金がカットされていました
が、文部科学省は補助金カットとなる定員
充足率の基準を段階的に引き下げてきまし
た。

都市部の大規模私立大学が、合格者数を
絞ったことで実質倍率が高くなり、これ
までの入試難易度が通用しなくなった、
と言われています。

私立大学全体としては以前に比べ、入学
者が定員を大きく超えることは少なくな
りましたが、同じ私立大学でも医学部の
場合は、どうでしょう?

私立大学医学部は、以前から定員を厳格
に守ってきました。入学辞退者が出た場
合の繰り上げ合格も、入学辞退者1名に
対し繰り上げ合格者を1名出す、といっ
た具合に入学定員を守る努力をしてきて
います。

入学定員100名の医学部で入学者が101
名となることもありますが、授業の質を
確保するために、入学定員を大きく超え
て入学させることはありません。

この例のように、同じ私立大学でも医学
部入試と他の学部の入試とでは、「別物」
と感じることが少なくありません。

私立大学は、併願をするので医学部受験
者の実数は分かりませんが、国公立大学
は分かります。

2019年度一般入試前期の国公立大学志
願者は、25万9千人です。このうち医
学部医学科志望者は1万6千人で、国公
立大学前期志望者の中で医学部志望者の
割合は、6.33%でした。後期の国公立大
学志望者全体の中の医学部志望者の割合
は、5.06%でした。

前後期の合計では、国公立大学志望者の
中で医学部志望者の割合は、5.81%でし
た。国公立大学のデータではありますが、
ここから大学入試全体の中で医学部志望
者は、5%程度と考えられます。

全ての学部を扱う予備校では、志望者が
僅か5%程度の学部のことばかり見てい
るわけにも行きません。

大学入試全体を見ている方の話の中には
「あまり医学部入試には詳しくないのか
な?」と思うこともあります。

他学部志望の友人の話も、医学部入試に
は通じない話かもしれません。

医学部志望者の皆さんは、大学入試全体
としては成り立つ話なのか、医学部入試
にも同じことが言える話なのかに注意し
てください。