医学部入試

日本経済新聞に「受験考」というコラムが、毎週
1回掲載されます。今週は「医学部に補欠合格」
というタイトルのコラムでした。

このコラムは匿名で書かれていますが、毎回のコ
ラムを読んでいると、どのような人が書いている
のか想像できます。ご自身は現役の大学受験生を
担当されている、それなりの予備校の方が書いて
いるのではないかと思います。熱心に受験生を指
導されている方だと思いますが今回のコラムを読
んで「予備校の人間でも私立医学部入試に対する
認識はこの程度か」と残念な気持ちになりました。

今週のコラムは、浪人していた教え子から「私立
医学部に合格した」という報告が来た、というも
のです。報告を受け「正直驚いた。」とあります。
その教え子は、現役の時は数学が苦手で「数学の
力がその医学部レベルに達したとは思えない。聞
けば、3月下旬に補欠合格が回って来たという」
と書かれています。

私は医学部入試、歯学部入試ばかり見ていて、他
の学部の入試は「なんでも聞いてくれ」と、言う
ほど詳しくはありません。他の学部の入試では使
うのかもしれませんが、医学部入試では「補欠合
格」という言葉は、あまり使いません。医学部で
は大学も含め、一般的には「繰り上げ合格」とい
う言葉を使います。補欠合格では、「補欠」なの
か「合格」なのかが、曖昧だからです。

ここまでは大した話では無いのですが、「数学の
力がその医学部レベルに達したとは思えない」と
いう点には違和感を覚えます。医学部を除く私立
大学の入試では、試験科目が3科目であることが
多く、4科目の私立医学部入試とは1科目の重み
が違います。「数学が出来なければ私立医学部に
は合格出来ない」という思い込みがあるのかも
しれません。

順天堂大学医学部一般A方式の配点は、数学
100点、英語200点です。国際医療福祉大学
医学部は数学150点、英語200点です。数学
で多少落としても、英語で稼げれば十分に合
格は可能です。また、理科も2科目あります。

これ以上に気になったのは「医学部入試では
毎年、補欠合格者が大量に出る。予備校など
が出す「合格」難易度のランクは「入学」の
難易度とは必ずしも一致しない。医学部の門
戸は意外に広く開かれている」と書かれてい
る部分です。

日本私立学校振興・共済事業団が全国597校
の私立大学の入試をまとめた報告によれば、
医学部の志願倍率は24.09倍、薬学部は6.40
倍、看護などの保健系は4.93倍です。医学部
では、繰り上げ合格を含めた総合格者は多く
なりますが、「門戸は意外に広い」は言い過ぎ
だと思います。

そして、最も「えっ?」と思ったのは「合格
の難易度と入学の難易度が、必ずしも一致し
ない」という点です。その理由として「補欠
合格者が大量に出る」ことを挙げています。

「補欠合格者」が多くない他の学部とは、か
なり感覚が違うのだと思います。正規合格者
数と繰り上げ合格者数は、イコールに近い感覚
を持っていて、そこから出た「難易度」の話で
はないかと思います。

河合塾などが発表する私立医学部の難易度ラン
キングでは正規合格者はもちろん、繰り上げ合
格者も含めて私立医学部の偏差値ランキングを
作っています。

他にも「補欠合格者が大学の授業についていけ
るのか、一抹の不安もある」ともあります。医
学部関係者と様々な話をする私は、この点にも
違和感を覚えます。

国公立・私立、文系・理系を合わせた全受験生
の中で私立医学部志望者の割合は、5%くらい
ではないかと思っています。全ての大学受験生
を対象にしていれば、志望者の少ない私立医学
部入試には目が届きにくいのだと思います。

付け加えるなら私立医学部以上に、普通の塾や
予備校は、私立歯学部入試について分かってい
ないと感じています。

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