目次
- 「推薦入試は楽」という記事の一例
- なぜ医学部・歯学部には当てはまらないのか
- 医学部・歯学部が本当に見ているもの
- ① 入学後の授業についていける学力
- ② 国家試験に合格できる見込み
- ③ 周囲に良い影響を与える人間性
- ④ 医師・歯科医師を志す強い意思
- 医学部・歯学部推薦入試の現実――具体例
- 実際に課される試験科目
- 不合格になる典型パターン
- 保護者にできる本当のサポート
- まとめ
- 「推薦入試は楽」という記事の一例
最近、次のような記事が多く見られます。
「学校推薦型選抜」――評定平均が合否を分ける
…指定校推薦なら大学が示す評定平均値を満たしていれば、不合格になることは極めて少ない。
「総合型選抜」――大学の『懐事情』で変わる評価基準(入学者確保優先)
…倍率が低ければ、志望理由書と面接でほぼ合格。
大学入試全体の話としては間違ってはいないのでしょうが、医学部・歯学部受験に当てはめて考えることは避けた方がいいでしょう。
まず指定校推薦入試ですが、昨年の獨協医科大学指定校推薦入試は、68名が受験しましたが合格者は23名でした。
3人受けて1人しか合格していない計算になります。
北里大学医学部指定校推薦も64名の受験者のうち29名が不合格となっています。
歯学部では指定校と公募の結果を分けて公表している大学はありませんので、正確には分かりませんが、東京歯科大学などでは指定校の受験生でも不合格となるケースはあると感じます。
唯一、指定校推薦の結果を公表している日本大学歯学部指定校推薦の昨年の結果は受験者3名、合格者ゼロでした。
ほとんどの大学の指定校推薦入試では不合格者は極めて少ないようですが、医学部や歯学部では指定校推薦入試と言えども、不合格者は多く出るのが現実です。
総合型選抜(AO入試)では、昨年の金沢医科大学AO入試は282名が志願し合格者は15名で、倍率は18.8倍となりました。
昭和大学(現・昭和医科大学)歯学部総合型選抜には36名が受験し合格者は10名、不合格は26名で不合格者の方が多くなっています。
総合型選抜でも医学部や歯学部では、高倍率の厳しい入試です。
「入学者の早期確保」といった感覚はありません。
医学部や歯学部の推薦・AOは、けして楽な入試ではありません。
他学部では「受ければ合格する試験」なのかもしれませんが医学部受験生、歯学部受験生の皆さんは、「医学部・歯学部は別だ」ということを忘れないで下さい。
- なぜ医学部・歯学部には当てはまらないのか
多くの大学では学校推薦型選抜や総合型選抜は、「学生を早めに確保すること」が大きな目的の1つです。
他学部では、評定や志望理由書が整っていれば合格しやすいのは事実と言えるでしょう。
しかし医学部・歯学部の入学者選抜で大学が重視するのは 「入学後、6年間の授業について行けるか」です。
医療が進歩する中、医学部も歯学部も6年間で学ぶことが非常に増えています。
4年生では全国の医学部生、歯学部生全員が受ける医学部CBT、歯学部CBTが待ち受けています。
これは大きな壁で、CBTに合格しないと病院実習には参加出来ません。
さらに6年生で卒業認定を受けるともう1つの壁、医師国家試験、歯科医師国家試験が待ち受けています。
文系学部のように「入学するとあとは何とかなる」という状況ではありません。
総合型選抜であっても学校推薦型選抜であっても、「自校の医学部生、歯学部生として相応しい人物」でなければ合格させることは出来ないのです。
そのため医学部受験や歯学部受験では、「指定校だから安心」「評定さえあれば大丈夫」、「部活を頑張ったから問題ない」といった話は全く通用しません。
- 医学部・歯学部が本当に見ているもの
- 入学後の授業についていける能力
- 国家試験に合格できる見込み
- 周囲に良い影響を与える人間性
- 医師・歯科医師を志す強い意思
形式は推薦・AOでも、これらを厳格に審査されます。
この文書の最初で取り上げた記事で難関大学について触れた部分では、「高校の先生のアドバイスなども受けながら、自分が本当に深く学びたいテーマとは何かを突き詰め、実際に探究活動や課外活動などで取り組んだ経験、そして何を学び取ったのか、そのプロセスも含めて審査されると考えるといい」とあります。
これも、総合型選抜・学校推薦型選抜全体の一般論としてはいいのでしょうが、とらわれ過ぎるのも考え物です。
「自分が本当に学びたいテーマとは何かを突き詰め」とありますが、医学や歯学を専門的に学ぶ前の受験生ですから、「医師になる。歯科医師になる」という強い意欲と、「医師(歯科医師)になってこういうことをやりたい」という受験生なりの将来像を示すことが出来れば十分です。
あくまで「自分は専門的なことを学ぶ前の受験生」ということを忘れないで下さい。
「本当に学びたいテーマ」は、医学部や歯学部入学後に探して行けばいいのです。
- 医学部・歯学部推薦入試の現実――具体例
医学部
日本の医学部には「筆記試験なしの推薦」は附属校推薦を除き存在しません。
必ず英語・数学・理科といった学力試験などの筆記試験が課されるのが原則です。
試験時間が短く、「早く正確に解く」力が必要となります。
歯学部(人気校)
- 東京歯科大学:英語・数学・理科の学力テスト+小論文+面接。
- 昭和医科大学歯学部(医学部も同様):英語・数学・理科+小論文+面接。
- 大阪歯科大学:英語・数学・理科+面接
- 日本歯科大学:英語+小論文+面接。
- 日本大学歯学部:適性試験(実態は学力試験)+小論文+面接
つまり人気校ではすべて学力試験が必須で、「評定があれば合格」という道は存在しません。
- 実際に課される試験科目
- 英語(長文読解がカギ、医療関連テーマも出題)
- 数学(数ⅠAⅡBが中心ですが、医学部では数学ⅢCの出題もあります)
- 理科(化学・生物・物理から1科目または2科目)
- 小論文(医療関連、社会問題など。歯学部では歯科に関するテーマ型が多くなります)
- 面接(自分自身が本気で医師・歯科医師を目指しているかを問われます)
→ 一般選抜並みの試験対策が必要です。
- 不合格になる典型パターン
- 評定はあるが、学力試験で点が取れない
- 志望校の学力試験対策が出来ていない
- 小論文・面接を軽視し十分な準備が出来ていない
- 出願書類が大学が求めるものから乖離している
→ 推薦でも不合格は珍しくありません。
- 保護者にできる本当のサポート
- 「推薦=楽」という誤解を正してあげること
- 子どもの本気度を一緒に確認し支えること
- 精神的に安心できる環境を整えること
- オープンキャンパスなどに一緒に行くこと
- 常に良き相談相手であること
- 子どもの状況を理解し、見守ること
医学部受験、歯学部受験は「情報戦」という面もあります。
親も「正しい医学部受験情報、歯学部受験情報」を把握することも大切です。
- まとめ
世間に出回る「推薦は楽」「評定さえあれば合格」といった考えは、医学部・歯学部の学校推薦型選抜、総合型選抜には通用しません。
- 医学部に「筆記試験なしの推薦」は存在しない
- 歯学部の人気校はすべて学力試験を課す
- 医学部でも歯学部でも、指定校推薦であっても不合格者は少なくない
- 英語・数学・理科・小論文・面接が医学部や歯学部の推薦・AOの基本
- 高倍率の試験を乗り越えるためには、志望校の試験内容に合わせた「志望校の入試対策」は欠かせない
結論:医学部・歯学部の推薦入試・AO入試は「一般選抜と同等の準備が必要」です。