さて情報について話をすると長くなるのですが、
今回は「情報を読み解く」ことについてお話しします。
医学部受験生も歯学部受験生もそれぞれ、
医師国家試験・歯科医師国家試験の合格率を気にしています。
合格率を気にすることはいいのですが、国試合格率のどこを見ていますか?
新聞などで発表されるのは、大学全体の合格率だけです。
もちろん、それも大切ですが実は厚生労働省からは
新卒、既卒(国試浪人)に分けて人数とともに発表されています。
メルリックス学院が毎年6月に発行する「私立医歯学部入試総括」には
掲載されていますが、見るべきは新卒の人数と合格率です。
新卒の国試受験者の数を見ることで留年や卒業延期などの様子をうかがい知ることができます。
つまり定員100名の大学で新卒受験者が120名であれば、
「けっこう留年組がたまっていたんだな」と考えられますし、
90名であれば「留年が多いのかな」と見ることができます。
もちろん、単年度ではなく複数年度を見た方がいいのですが、
単年度でもいいでしょう。
次に新卒の合格率を見て下さい。
例えば、今年の医師国家試験(第103回)で言えば、新卒全体の合格率は94.8%です。
これに対し既卒(国試浪人)の合格率は54.3%です。
京都大学に至っては既卒の合格率は0%です。
つまり、既卒の国試合格率は、本人の能力や大学の教育体制ももちろんですが、
本人の意欲がとりわけ大きいと言うことです。
ですから、既卒を含めた大学全体の合格率だけを見て判断することは
避けてもらいたいものです。
今年の東大の既卒の合格率は75%です。
これに対して山形大学の既卒の合格率は33%です。
これを見て、さすが東大と考えていいのでしょうか。
実は東大の既卒受験者は8名です。
今年の新卒も8名が不合格です。
一方、山形大学の既卒受験者は3名で、今年の新卒の不合格者も3名でした。
これをどう考えるかです。
新卒で3名しか不合格を出さないところを重視するのか、
既卒で75%の合格率を重視するのか、
それはそれぞれの考えでいいと思いますが、
ここを全く見ていないうえでの判断はどうかなと思います。
ちなみに東大の新卒合格率は全体の合格率を下回っているのですね。
東大理III受験者のなかには、「医師になりたい」という気持ち以上に
「日本で一番の難関を突破したい」という理由で受験する受験生もいるようですね。
大学名 | 総数 | 新卒 | 既卒 | ||||||
受験者 数 |
合格者 数 |
合格率 % |
受験者 数 |
合格者 数 |
合格率 % |
受験者 数 |
合格者 数 |
合格率 % |
|
山形大学 | 101 | 96 | 95.0 | 98 | 95 | 96.9 | 3 | 1 | 33.3 |
東京大学 | 112 | 102 | 91.1 | 104 | 96 | 92.3 | 8 | 6 | 75.0 |
京都大学 | 107 | 96 | 89.7 | 99 | 96 | 97.0 | 8 | 0 | 0.0 |
総合計 | 8,428 | 7,668 | 91.0 | 7,629 | 7,234 | 94.8 | 799 | 434 | 54.3 |
※総合計=全大学医学部合計+認定および予備試験 |
次は「情報を読み解く」のパート2で、医学部・歯学部で「現役に有利な大学は?」です。