医学部再受験

東京医科大学の学士選抜は大成功と言えそう。今後、募集人員増も

目次
1. はじめに
2. 学士選抜の概要
3. 2025年度学士選抜の実施結果
4. 選抜方法と評価基準
5. 制度の意義と評価
6. 今後の展望と課題
7. おわりに

1. はじめに
東京医科大学は、2025年度入試から新たに「学士選抜」を導入しました。
この制度は、他分野で学士・修士・博士課程を修了した者を対象に、医師を志す多様な人材を受け入れることを目的としています。
初年度となる2024年11月に試験が実施されました。
その結果を振り返り、今後の見通しを考えてみます。

2. 東京医科大学の学士選抜の概要

出願資格

初年度の学士選抜は、以下のいずれかの要件を満たす者が出願可能でした。
• 日本国内の4年制または6年制大学を卒業した者、または2025年3月卒業見込みの者。
• 日本国内の大学院修士課程または博士課程を修了した者、または2025年3月修了見込みの者。
私立医学部の再受験生対象の医学部入試では「4年生以上の大学に、2年以上在籍で64単位以上取得の者」といった大学在籍者にも受験資格を与えることが多いのですが、東京医科大学の学士選抜は「学士」、「修士」、「博士」に限定した医学部入試となっています。
出願期間は2024年10月21日から11月1日までで、試験日は11月30日でした。実は、この日は東京医科大学の学校推薦型選抜(推薦入試)が行われた日で、試験問題は学校推薦型選抜と同じ問題が使われました。
合格発表は1次の書類審査通過者が11月21日、2次試験を終えての最終合格者の発表は12月5日に行われました。

3. 2025年度(初年度)学士選抜の実施結果

初年度の学士選抜の実施結果は以下の通りです。

• 募集人員:2名以内
• 志願者数:38名 (男20名、女18名)
• 受験者数:38名 (男20名、女18名)
• 1次試験、書類審査通過者:23名 (男13名、女10名)
• 最終合格者:2名 (男2名)
• 合格倍率:19.0倍

東京医科大学の学士選抜は受験者38名のうち、23名が1次試験を通過し、60%の受験者が2次試験に進むことが出来ました。
この書類審査では出願書類(志望の動機、学歴・職歴、成績証明書、卒業(修了)証明書)が、12点満点で得点化され、1次試験の合格最低点は5点でした。
2次試験に合格できたのは1次試験通過者23名のうち、募集人員と同じ2名でした。38名の志願者でしたので、最終的な倍率は19倍と非常に厳しい医学部入試となりました。
また、合格者には初年度授業料(2,900,000円)の全額免除が適用されました。

4. 選抜方法と評価基準

初年度の学士選抜2次試験の選抜方法は下記のようになっていました。
• 基礎学力検査:数学・物理・化学・生物の4科目。 配点100点。ただし、基準点(初年度は51点)を設け、基準点を超えた受験生のみを合否の対象として、基礎学力検査の得点は合否判定には使われませんでした。

• 書類審査(12点):志望の動機、高校からの学歴及び職歴、成績証明書など

• 小論文 (36点):日本語の課題1題、英語の課題1題。

• 面接  (32点):MMI(Multiple Mini Interview)形式の面接

2次試験は書類審査(12点)、小論文(36点)、面接(32点)の合計80点満点で評価され、面接の得点が著しく低い場合には、「合計点に関わらず不合格となることがある」、と明記されていました。
初年度の合格最低点は80点満点の60点、得点率75%と非常に高くなりました。
80点満点での合否判定でしたが、同点の場合の順位付けについても予め、記載されていました。
優先順位は、「面接の得点」、それでも同点の場合は「小論文の得点」、面接と小論文も同点の場合は、「基礎学力検査の得点」と明示されていました。
面接は小論文より配点が低いのですが、同点の場合は面接が最重視されます。

5. 制度の意義と評価

学士選抜の導入は、以下の点で「意義深い」、「成功」と評価していいと考えます。

• 多様な人材の受け入れ:他分野での学士・修士・博士課程修了者を対象とすることで、異なるバックグラウンドを持つ人材が入学し、その他の学生を大いに刺激すると同時に、学年のリーダーとなって同級生を引っ張って行くと思われます。

• 優秀な人材の確保:19.0倍という高い競争倍率からも、優秀な人材を入学させることに成功したと考えられます。

• 経済的支援:合格者には初年度授業料の全額免除が適用され、経済的な支援が提供され、そのことも多くの志願者が集まったことに結びついたと考えられます。
これらの点から、学士選抜は多様な人材、優秀な人材を入学させて学生を活性化させることに繋がる新たな入試制度と評価出来ると思います。
実は、東京医科大学の学士選抜の募集人員は2名と非常に少ないのですが、「どんな受験生が来るのか分からないから、多くは出来ない」と、東京医科大学から説明を受けていました。
しかし、38名が志願し倍率は19倍となり、しかも合格最低点が非常に高かったことから、東京医科大学も「やって良かった」と考えていると思います。
実際、オンライン個別指導メルオンからも2名が1次試験を突破し、学士選抜の2次試験に挑みました。
私は面接のNMI対策を指導しましたが指導しながら2名とも、非常に優秀だと感じていました。
残念ながら、この2名を合格に導くことは出来ませんでしたが非常にいい多くの人材が学士選抜を志願したことは間違いないでしょう。
東京医科大学、学士選抜の募集人員増があっても不思議ではありません。

6. 今後の展望と課題

今後の展望として、以下の点が挙げられると思います。

• 制度の継続と拡大:初年度の成功を踏まえ、募集人員の拡大や選抜方法の見直しを通じて、より多くの優秀な人材の入学が期待されます。
• 合格者の追跡調査:学士選抜合格者の入学後の学業成績の追跡調査も必要だと思います。
• 情報の透明性:東京医科大学は入試情報を積極的に公表していますが、選抜方法や評価基準の明確化を図り、より一層受験者に対する情報提供を充実させて、私立医学部入試をリードしてもらいたいと思います。

7. おわりに

東京医科大学の学士選抜制度は多様な人材に医学を学ぶ機会を提供すると同時に、東京医科大学医学部医学科の活性化に寄与できる入試制度だと思います。
初年度の実施結果からも、その可能性と意義が示されましたと言っていいでしょう。
今後の学士選抜制度の発展と、合格者の活躍が期待されます。