目 次
1,医学部の指定校推薦入試が外される理由 2,歯学部の指定校推薦入試の現実 3,指定校推薦の校内選抜はどう決める? 4,医学部や歯学部の入試は、他学部とは違います |
1,医学部の指定校推薦入試
インターネット上に、「指定校推薦があるから安心」は危険な勘違い! 親世代の9割が知らない大学受験の残酷な現実、という記事がありました。
書いたのは、オンライン塾をやっている方のようです。
センセーショナルなタイトルですが、内容は大学に深く取材することなく知っている範囲で書いたように感じるものでしたし、少なくとも医学部や歯学部の指定校推薦入試には当てはまらないように思いました。
記事の内容は大きく分けて2つで、1つは「指定校推薦は無くなる可能性もある」で、2つ目が「指定校推薦があったとしても自分が貰えるか分からない」です。
1つ目の「指定校推薦も突然、大学から高校が外されることもある」、ということについて、指定校から外される理由として「指定校推薦で入学した学生が中退した時」とあり、有名ユーチューバーの具体例を挙げています。
中退したユーチューバーのことは、あくまで1つの例で、「指定校推薦で入学した学生が中退した時」ではなく「指定校推薦で入学した学生に問題があった時」とするべきだと思います。
「先輩で中退した人はいないから安心」と考えるのは拙速です。
北里大学医学部は指定校推薦入試を行っていますが、以前指定校から外された高校がありました。
その時に北里大学医学部の方に「なぜ、あの高校は指定校から外されたのか」を聞きました。
答えは「指定校推薦で入った学生が留年したから」ということで、「留年するような学生を送ってくる高校は信用できない。高校との信頼関係が崩れた」ということでした。
医学部の指定校ですからバリバリの進学校でしたが、指定校推薦で入学後何か問題を起こした先輩がいると指定校から外される可能性があります。
「中退した先輩がいないから大丈夫」と考えずに、必ず高校に「大学から指定校の通知(推薦依頼)が来たか」を確認してください。
2,歯学部の指定校推薦入試の現実
記事には指定校から外されるケースとして、もう1つ「指定校推薦で入ってくる学生の他に、入学する学生が4年間いない」ケースも挙げています。
こういうこともあるのかもしれませんが、私立歯学部の指定校推薦では「指定校にしているのに、志願者がいない」ということの方が、間違いなく多いでしょう。
私立歯学部受験で、「特定の高校から毎年確実に入学者がいる」ということはレアケースだと思います。
そもそも私立歯学部志望者そのものが少ない中で、「毎年必ず私立歯学部志望者がいて、しかも優秀」、という高校は非常に少ないのではないかと思います。
歯科医師や医師の子供が多い、一部の私立中高一貫校くらいではないかと思います。
大阪歯科大学は今年から「指定校推薦入試」をやめて「公募専願制推薦」を行います。
西日本の人気歯学部ではあっても、「指定校」からの志願者が毎年確実にいるわけではなく、「指定校」を廃止し、「公募」にしてより多くの受験生にチャンスを与えることにしたようです。
この「公募推薦」には「公募専願制」と「公募併願制」と2つの公募推薦入試を行いますが、「公募専願制」は「各高校から1名のみの出願」となっています。
3,指定校推薦の校内選抜はどう決める?
記事では2つ目に「指定校推薦を自分が貰えるか分からない」ということを取り上げています。
これは確かに、その通りです。
指定校推薦は基本的に高校から推薦できる人数は大学から「1名」とか「2名まで」といった感じで決められています。
志望する大学の指定校推薦を考えている同級生が複数いる場合、「校内選抜」が行われます。
ただ、校内選抜について記事では、「指定校推薦は、評定が上の生徒から決めていきます」と断定的に書いていますが、そういう高校もあるでしょうがそうではない高校もあります。
例えば、「一般選抜で受かる学力の生徒には推薦を出さずに、一般選抜では苦しいと思われる生徒に推薦を出す」という高校もあります。
評定が高い生徒にはあえて推薦を出ない、ということになります。
合格実績を考えて、このように考える高校もあります。
単純に高校の成績だけを見るのではなく、生徒会活動や学校行事、部活動での積極的な姿勢を評価する高校もあります。
指定校推薦での受験を考えている皆さんは、早めに高校に「推薦者はどういう基準で決めるのか」を確認することをおススメします。
4,医学部や歯学部の入試は、他学部とは違います
もう1点、「医学部受験や歯学部受験は、他の学部の受験とは違う」ということも意識してください。
「指定校推薦なら、よほどのことが無い限り合格する」と言うことはありません。
先程触れた北里大学医学部の指定校推薦の、昨年の入試結果を見ると受験者64名に対し、合格者は35名で、29名が不合格となっています。
指定校推薦と言えども、半数近くが不合格となっています。
ちなみに、昭和医科大学では医学部に、実質的に「指定校推薦」と言っていい、特別協定校推薦があります。
特別協定校は2校ですが、この特別協定校は医学部に多くの生徒が入学する高校ではありません。
昭和医科大学には薬学部や保健医療学部もあり、ここに多くの生徒が入ってくる高校2校を特別協定校にしています。
最近では、順天堂大学が宝仙学園理数インター中学・高等学校を系属校としたり、北里大学が順天高校を北里大学附属順天中学・高等学校とするなど、医学部を持つ大学の、高校の囲い込みの動きが目に付きます。
順天堂大学も北里大学も、医学部の他に多くの学部を持っていて医学部以外の学部の内部推薦は当然として、医学部も系属校推薦、附属校推薦が始まると思います。