医学部入試

河合塾が医学部の偏差値を更新、変化した大学も ― 最新動向と偏差値の読み解き方 ―

目次

  1. 河合塾の偏差値更新の概要と背景
  2. 河合塾と駿台の違い、模試主催者で偏差値が変わる理由
  3. 偏差値・刻み幅のルール:2.5刻み、60→62.5、61はない
  4. 偏差値と合格可能性ライン:河合塾=50%ラインの意味と限界
  5. 受験生・保護者が取るべき対応・活用法
  6. まとめ:偏差値更新をどうとらえるか

1|河合塾の偏差値更新の概要と背景

医学部受験を目指す受験生・保護者の皆さんにとって、模試の偏差値は志望校選びや戦略立案に欠かせない指標です。
しかし、模試を運営する予備校ごとに偏差値の算出方法や基準が異なるため、「思っていた難易度と違う」と感じることもあります。

2025年10月14日、河合塾が医学部の偏差値ランキングを更新し、ランク変動が見られました。

偏差値更新の背景

河合塾は毎年、全統模試(全国統一模試)受験者の実データと、大学ごとの実際の合否結果を照らし合わせて偏差値を修正します。
これは単なる数字の修正ではなく、「実際の合格可能性50%」となるボーダーラインを再評価する作業です。
「偏差値」とは、「ボーダーライン偏差値」を示します。

偏差値の更新は以下のような理由で行われます。

  1. 母集団の変動
    受験者層の志望動向が変化すると、模試の統計結果にもズレが生じるため補正が必要になります。
  2. 合否データの再集計
    入試結果が出そろった後に、模試偏差値と実際の合格ラインを突き合わせて修正します。
  3. 志望動向の変化
    ある大学が人気化・敬遠化することで、合格ラインが上がったり下がったりする現象もあります。

つまり、偏差値は単なる「成績指標」ではなく、医学部志望者全体の行動データに基づく「動的な指標」なのです。

今回(10月)の河合塾の更新では兵庫医科大学の偏差値がこれまでの65.0から、62.5に変更されています。

2025年では既に河合塾は、何回か「医学部の偏差値ランキング」の改定があり東京医科大学、金沢医科大学の偏差値が引き下げられ、関西医科大学の偏差値が引き上げられています。

今後も河合塾、駿台予備学校ともに「医学部の偏差値ランキング」は変化する可能性があります。

2|河合塾と駿台の違い、模試主催者で偏差値が変わる理由

同じ大学を目指す場合でも、「河合塾の偏差値」と「駿台の偏差値」が異なることがあります。
この違いは、模試の母集団(受験者層)や合格率の基準の違いに由来します。

河合塾の偏差値=合格可能性50%ライン

河合塾が定義する偏差値は、「合格可能性50%のライン」、つまり「半数が合格できる」位置を指します。
模試でその偏差値を取れた受験生が、その大学に合格する確率はおおむね50%とされます。

たとえば偏差値60.0の大学は、「その模試で平均(偏差値50.0)よりかなり上位にいる受験生の半数が合格可能」という意味になります。
一方で、駿台やベネッセ合格可能性60%を基準にしており、数値そのものがずれるのです。

偏差値が違う理由まとめ

要因 河合塾 駿台
合格率の基準 50% 60%
偏差値の刻み幅 2.5刻み(60→62.5→65.0) 1刻み(60→61→62)
模試母集団 全統模試:幅広い層 全国模試:上位層が中心
表現の仕方 ボーダー偏差値 合格目標ライン

このように、同じ大学でもボーダーライン偏差値が異なるのは、算出方法と母集団の違いによるものです。
したがって、「河合塾で62.5、駿台で63」というような差があっても、それ自体が矛盾ではありません。

とは言え、それぞれの「医学部偏差値ランキング」を細かく見て行くと、「見解の相違」も見えてきます。
これについては後で詳しく触れます。

3|偏差値・刻み幅のルール:2.5刻み、60→62.5、61はない

「医学部の偏差値」を正しく理解するうえで重要なのが、「河合塾特有の2.5刻み」というルールです。

河合塾の偏差値刻み

河合塾では、偏差値を以下のような間隔で公表します。

50.0 → 52.5 → 55.0 → 57.5 → 60.0 → 62.5 → 65.0 → 67.5 → 70.0 …

つまり、偏差値60の次は「61」ではなく「62.5」になります。
「61」や「61.5」という数値は存在しません。

これは、全統模試の受験者数や統計処理の安定性を保つための設計です。
河合塾は、「医学部の偏差値は、1刻みで表すほど精密ではない」と考えているようです。

偏差値の読み方のコツ

  • 「60.0」と「62.5」の間には、約2.5ポイントの差があります。
    その差は、単なる“1ポイント”以上の実力差と考えてよいでしょう。
  • 「62.5」を取るには、「60」より約1〜1.5割上の得点率が必要とされるケースもあります。

この仕組みを知らないまま「60→61→62」と理解すると、合格可能性を誤って判断してしまうことがあります。
特に「ボーダーぎりぎりの大学」を狙う際には、この2.5刻みの意味を正確に把握しておくことが大切です。

4|偏差値と合格可能性ライン:河合塾=50%ラインの意味と限界

河合塾全統模試の偏差値表にある「ボーダー」は、「合格可能性50%」の位置を示します。
しかし、これは「半分が受かる」という単純な数字ではなく、模試の受験母集団に基づいた統計的予測です。

「50%ライン」の意味

河合塾が示す「ボーダー偏差値」は次のような考え方です。

  • 模試でその偏差値を取ると、その大学の合格可能性がちょうど半分(50%程度)。
  • 同じ模試を受けた母集団に基づく推定値であり、全国平均とは異なる。
  • 模試の実施時期・受験者層・志望動向によって微調整される。

その時の「模試を受けた人たちの中での相対評価」として解釈するのが正確です。
ですから模試の受験者数は非常に重要で、受験者数が最も多い河合塾全統模試と駿台全国模試から導き出された「医学部の偏差値」は他と比べ信頼性が高いと考えられています。

仮に「私立医学部模試」であっても、受験者が3000人未満であれば、信頼性に欠けると考えていいでしょう。

偏差値を見るときの注意点

  1. 偏差値は絶対評価ではない
    年によって母集団の質や傾向が変わるため、「去年の60=今年の60」とは限りません。
  2. 過去問との整合性を確認する
    模試偏差値が65でも、過去問得点が合格最低点に届いていなければ合格は難しい。
    必ず得点分布・合格最低点と照らして判断しましょう。
  3. 偏差値に安全マージンを持たせる
    「ボーダー50%」の大学を狙うなら、+2.5(1ランク上)を実力目標にしておくのが安全です。
  4. 複数予備校のデータで確認する
    駿台・東進・ベネッセなど複数データを見比べることで、各予備校の評価傾向を把握できます。

河合塾と駿台予備学校、「医学部の偏差値」の相違点

ここで河合塾と駿台予備学校の「医学部の偏差値ランキング」の相違点を見ておきましょう。

  • 関西医科大学と大阪医科薬科大学医学部、東京医科大学

 

  河合塾 駿台
関西医科 70.0 66
大阪医科薬科 67.5 66
東京医科 67.5 63

河合塾は「関西医科大学が3校の中で1番難しく、大阪医科薬科大学と東京医科大学は同じ」としています。

一方、駿台予備学校は「関西医科大学と大阪医科薬科大学の難易度は同じ、東京医科大学は2校より下」としています。

  • 聖マリアンナ医科大学と東海大学

 

  河合塾 駿台
聖マり 62.5 59
東海 65.0 58

河合塾は「東海大学医学部の方が難しい」としていますが、駿台予備学校は「聖マリアンナ医科大学の方が難しい」として、全く逆の見解になっています。

 

  • 私立医学部で2番目に易しい大学

 

  河合塾 駿台
女子医 60.0 56
金沢医科 62.5 55
川崎医科 60.0 53

河合塾も駿台予備学校も「私立医学部で一番易しい大学は、川崎医科大学」という点では一致しています。
しかし、「私立医学部で2番目に易しい大学」については、河合塾は「東京女子医科大学は川崎医科大学と同じ難易度」としていますが駿台予備学校は「東京女子医科大学より金沢医科大学の方が難易度は下」としています。

 

これらは「偏差値」から「難しい」とか「易しい」とか述べているだけということは理解しておいてください。

 

5|受験生・保護者が取るべき対応・活用法

偏差値が更新されたことで、志望校選びや目標設定の見直しが必要なケースもあります。
ここでは、実際の対応法を具体的に整理します。

基準ラインを見直す

更新後に偏差値が上がった大学を志望している場合は、目標を少し引き上げましょう。
逆に下がった大学を狙う場合も、油断せず過去問分析を継続することが大切です。

バッファをもたせた目標設定

河合塾のボーダー偏差値は50%ラインなので、「62.5の大学を志望」なら65.0レベルを目指すのが現実的です。
安全圏を確保するため、2.5ポイント分の余裕を持つ学習計画を立てましょう。

複数予備校のデータを比較

河合塾だけでなく、駿台や東進のデータも併せて見ることで、「どの予備校がその大学を高め・低めに評価しているか」を把握できます。
とくに私立医学部では、予備校によって偏差値評価の傾向が異なるため、比較は必須です。

過去問・得点分布を重視

偏差値だけに頼らず、実際の得点ベースで自分の位置を把握することが大切です。
合格最低点や平均点を確認し、「どの科目で何点足りないか」を明確にしましょう。

保護者へのアドバイス視点

保護者の方は、偏差値の上下に一喜一憂するよりも、「本人の現状と成績推移」を冷静に見守る姿勢が大切です。
偏差値は「目安」であり、「実力を測る唯一の指標」ではありません。

6|まとめ:偏差値更新をどうとらえるか

河合塾の医学部偏差値ランキングの更新は、受験生全体の動きを映す鏡のような存在です。
ただし、偏差値はあくまで確率的な目安であり、絶対的な合否ラインではありません。

この記事のまとめ

  • 河合塾の偏差値は「合格可能性50%」を基準に算出される。
  • 偏差値は2.5刻みで、60の次は62.5。61という数値は存在しない。
  • 更新は全統模試受験者のデータに基づき、変動する。
  • 駿台など他予備校とは算出法・母集団が異なるため、単純比較はできない。
  • 偏差値に過信せず、過去問分析と得点力チェックを並行することが重要。

偏差値は「志望校への距離を測るための地図」のようなものです。
数字だけを追うのではなく、その背景にある受験動向やデータの意味を読み取り、
戦略的に活用することが合格への近道になります。

2025年10月 駿台予備学校と河合塾の「医学部偏差値ランキング」

 

順位 大学 駿台 河合塾
慶応義塾 77 72.5
東京慈恵会 70 70.0
順天堂 69 70.0
日本医科 68 70.0
国際医療福祉 66 67.5
  大阪医科薬科 66 67.5
  関西医科 66 70.0
自治医科 63 67.5
  昭和医科 63 67.5
  東京医科 63 67.5
  東邦 63 67.5
12 産業医科 62 67.5
13 帝京 61 65.0
  藤田医科 61 67.5
  近畿 61 65.0
16 東北医科薬科 60 65.0
  杏林 60 65.0
18 日本 59 65.0
  聖マリアンナ 59 62.5
  愛知医科 59 65.0
  兵庫医科 59 62.5
22 北里 58 62.5
  東海 58 65.0
24 久留米 57 62.5
25 岩手医科 56 62.5
  獨協医科 56 62.5
  埼玉医科 56 62.5
  東京女子医科 56 60.0
  福岡 56 62.5
30 金沢医科 55 62.5
31 川崎医科 53 60.0