医学部・歯学部を目指す受験生や保護者の方の中には、志望理由書を「合否を左右する重要書類」だと考え、何日もかけて推敲する人が少なくありません。
しかし実際には、志望理由書に時間をかけすぎることは非効率であり、場合によっては受験準備全体のバランスを崩す原因にもなります。
なぜなら、大学は志望理由書そのものを「評価対象」としていないからです。
入試要項をよく読むと、点数が付くのは「面接・小論文」や「学力試験」であり、「志望理由書の内容を評価する」とは一言も書かれていません。
それでも大学が志望理由書を提出させる理由は、「面接の参考資料」として使うためです。
つまり、志望理由書は面接で面接官が話を展開するための「材料・資料」にすぎないのです。
この記事では、医学部・歯学部入試の実態を踏まえて、
「なぜ志望理由書に時間をかける必要がないのか」
「志望理由書をどのように活かすべきか」
を、医学部・歯学部受験指導の現場経験に基づいて詳しく解説します。
目次
- 志望理由書に時間をかけすぎる受験生が多い理由
- 大学は志望理由書が「誰の手によるものか」判断できない
- 入試要項を読むとわかる:志望理由書は評価対象外
- 「志望理由書指導」に潜む塾・予備校のビジネス的側面
- それでも大学が志望理由書を提出させる理由
- 志望理由書は「面接での質問材料」である
- 志望理由書に書いた内容を面接で活かすための準備
- 効果的な志望理由書作成のポイント3つ
- まとめ:時間をかけるべきは“書くこと”ではなく“話す準備”
- 志望理由書に時間をかけすぎる受験生が多い理由
毎年、医学部・歯学部を目指す多くの受験生が「志望理由書」に過剰な時間をかけています。
「文章が下手だと印象が悪いのではないか」「熱意が伝わらないと不合格になるのでは?」といった不安から、志望理由書の推敲に何日も費やすケースがよくあります。
しかし、医学部入試・歯学部入試の本質を知ると、それが誤った努力であることが分かります。
大学が見たいのは「きれいな文章」、「整った文書」ではなく、「あなたという人物像」を直接確かめることです。
それは、面接の中でしか評価できないのです。
- 大学は志望理由書が「誰の手によるものか」判断できない
志望理由書は、提出時点で大学側にとって「本人が書いた保証」がありません。
お金を払って代筆を依頼したのか、塾や予備校で添削を受けたのか、自分で試行錯誤して書いたのか——大学には見分ける方法がないのです。
医学部関係者は、「最近はAIに書かせた、と思われるものが多く、ほとんど同じ志望理由書が多い」と嘆いていました。
入試において、大学が誰が書いたか分からない志望理由書に点数をつけて評価して合否判定に使用することは、著しく公平性を欠く行為になります。
この理由から、医学部・歯学部では「志望理由書の内容」そのものを合否の基準にはしていません。
- 入試要項を読むとわかる:志望理由書は評価対象外
多くの大学では、入試要項に「出願書類に基づく評価」と書かれていても、その「出願書類」とは「調査書(評定平均や出欠状況)」を指しています。
医学部受験、歯学部受験では「志望理由書の内容を評価する」と明記している大学は存在しません。
定員割れしているような大学、それも卒業後に国家試験の無い学部でなら「志望理由書がそれなりに書けている」というだけでの合格もあるかもしれません。
しかし、卒業後に国家試験が控えている医学部や歯学部ではそうは行きません。
医学部入試や歯学部入試では、出願時に提出した志望理由書が点数化されることはなく、学力試験や面接でのやりとりこそが合否を分けるのです。
「志望理由書が上手く書けないと合格できない」というのは、誤った情報、誤った思い込みです。
- 「志望理由書指導」に潜む塾・予備校のビジネス的側面
一部の塾・予備校では、「志望理由書対策」として個別指導や添削指導を繰り返し受けさせるケースがあります。
もちろん、文章構成を学ぶ経験として意味がないわけではありません。
しかし実際には、塾側の収益確保を目的とした指導の延長である場合もあります。
「合格のために必要」と言われると不安になり、保護者も納得してしまいがちですが、
本来、合否を決めるのは志望理由書ではなく学力・面接力です。
限られた時間をどこに使うかを冷静に見極めることが、医学部・歯学部合格の鍵となります。
- それでも大学が志望理由書を提出させる理由
それでは、なぜ医学部や歯学部はわざわざ志望理由書を提出させるのでしょうか。
その答えは明快で、「面接の材料」として使うためです。
面接官は短時間で受験生の意欲、人間性を知る必要があります。
そこで、志望理由書に書かれた内容をもとに質問を作り、
「本当にその考えを持っているのか」「どの程度自分の言葉で語れるのか」を確認します。
例えば「志望理由書にこう書いているけど、なぜそう考えた?」、「目指す将来像を書いているけど、なぜそうなりたい?」といった感じで質問を投げかけます。
つまり、医学部受験・歯学部受験においての志望理由書は「評価の対象」ではなく、「質問の材料・資料」なのです。
- 志望理由書は「面接での質問材料」である
面接では、志望理由書に書いた内容から深掘りされた質問がされます。
たとえば次のような流れです。
- 志望理由書:「父が医師で、その姿に憧れた」
→ 面接官:「いつ、どのような場面で医師としての姿を見たのか?」 - 志望理由書:「人の役に立つ仕事がしたい」
→ 面接官:「人の役に立つ仕事はいくらでもあるけど、なぜ医師(歯科医師」?」
このように、志望理由書に書いた内容について、根拠をもって話せるかどうかが、面接で評価されるポイントです。
文学部の試験ではありませんので、志望理由書自体の文章ではなく、面接での「理解の深さ」「説得力」「一貫性」「真実性」が重視されます。
- 志望理由書に書いた内容を面接で活かすための準備
志望理由書を作成する際は、「面接で質問されたらどう答えるか」を想定しておくことが大切です。
以下の3つを意識して整理しておくと、どんな質問にも落ち着いて対応できます。
- なぜ医師(歯科医師)への道を選んだのか(動機)
└ 自分の体験・人との関わりなど、実感のある理由を説明できるように。 - なぜその大学を志望したのか(理由)
└ 理念、カリキュラムや教育方針、実習環境などその大学ならではのことを自分なりに理解しておく。 - 将来どんな医師・歯科医師になりたいか(展望)
└ 「地域医療に貢献したい」など抽象的でなく、具体的なビジョンを持つ。
この3点が話せるように準備しておくことが基本になりますが、志望理由書に書いたことについて何を聞かれてもいいように準備してください。
「志望理由書に書いたことが本当なのか」を確かめられると考えていてください。
- 効果的な志望理由書作成のポイント3つ
- 自分の言葉で簡潔に書く
難しい表現や美辞麗句は不要、自分の考えを素直に書くことが大切です。 - 面接で話しやすい内容にする
書いたことを口頭で説明できるかを意識して構成しましょう。 - 大学の特色は本気で調べる
志望する大学だけを見ていると危険です。
例えば「早期体験実習があるから」と書くと「それはどこの大学でもやっている」となってしまいます。
志望理由書に何を書いたらいいのか分からなければメルオンのような医学部受験、歯学部受験を専門にしていて大学関係者とも頻繁に会って大学が何を求めているかを分かっている予備校に相談するのもいいでしょう。
- まとめ:時間をかけるべきは「書くこと」ではなく「話す準備」
志望理由書は、面接の出発点であり、評価対象ではありません。
そのため、時間をかけて完璧な文章を目指すよりも、
「面接で何を聞かれても説明できる準備」に力を注ぐことが何倍も重要です。
医学部・歯学部の入試では、面接官が最も重視するのは「入学後に本気で勉強するのか」「同級生にいい影響を与えられるのか」「明確な目的意識を持っているのか」で、それを裏打ちする「意欲」「人柄」「誠実さ」「考え方の深さ」を見ています。
それを伝えるためのツールとして志望理由書を位置づければ、無駄のない効率的な受験準備ができます。

