医学部入試

はじめに

医学部入試を志す皆さんにとって、「環境の変化」「志望動向」「どこに注意すべきか」は極めて重要です。

河合塾の最新レポートによると、私立医学部入試を取り巻く状況に大きな変化が出ているわけではありませんが、方式別・大学別には明確な動きが出ています。

私立医学部を目指す受験生・保護者の皆さんは、戦略的にこのデータを読み解くことが求められます。

今回のブログでは、レポートの内容を整理したうえで、「私立医学部受験における対策ポイント」を解説します。

医学部合格を目指す受験生・保護者の方ともに、志望校選び・受験準備にぜひお役立てください。

目次

  • 私立医学部の志望動向(ポイント整理)
  • なぜ「私立医学部」で日にち・方式・募集数の変化が起きているのか
  • 受験生・保護者が押さえておくべき「対策ポイント」
  • 保護者の皆様へ「知っておきたいポイント」
  • 大学別に見た私立医学部の動向
  • 最後に、冷静な判断で戦略を立てよう

 

1,私立医学部の志望動向(ポイント整理)

まず、私立医学部合格をめざす受験生の動向を、河合塾データをもとに整理します。

・志望者数の推移

河合塾の分析レポートによれば、私立大学医学部医学科の模試(第2回全統共通テスト模試)における志望者数は、前年比で 103 % と微増となっています。
方式別で見ると

  • 一般方式:前年比 100 %(ほぼ横ばい)
  • 共通テスト方式 前年比 114 % と増加傾向。
  • つまり、私立医学部を目指す受験生全体の数が大きく増えているわけではないものの、方式によって“動き”が出ているという状況です。

・成績分布・難易度の状況

志望者の成績分布に関して、私立医学部医学科一般方式志望者について「偏差値67.5以上の高成績層はやや増加」しているが、“ボーダー偏差値帯全体”としては昨年と大きく変わっていない、と河合塾は分析しています。
また、河合塾のレポートでは「入試本番においても難易度が大きく変わるとは予想していない」としています。

つまり、「上位層が少し活発化」「ボーダー近辺は例年通り」という構図です。

・方式・大学別の変化

私立医学部入試において、特に次のような変化・注目点があります:

  • 日程変更

例えば、一般方式の一次試験日程を「1月下旬」から「2月上旬」に移す大学(獨協医科大学、北里大学、杏林大学、金沢医科大学、川崎医科大学)があります。
→ これにより、他大学との日程バッティングが起こりうる状況が増加しています。

志望校選定時には、特に2月1日から5日までに1次試験を行う大学をよく確認することが重要です。

  • 学費引き下げ

藤田医科大学では6年間の学費を約30%引き下げる措置があり、志願者数が模試時点でも前年比で122%と増加している状況です。

  • 募集人員の変更

一般方式での募集人員が「減少」となるケースが複数大学であり(例:北里大75→65名、杏林大87→79名、昭和医科大101→88名)などの影響を考慮する必要があります。

募集人員が減れば合格者数も減るわけですから、難易度は上がる可能性があります。

  • 共通テスト利用方式の設置・増枠

北里大が共通テスト利用方式を募集人員5名で新設します。

杏林大では共通テスト方式募集人員を15→25名に増やし、全統模試で志望者は前年比160%と大幅に増えています。

これらの変化は、志望校選定や受験戦略において無視できないファクターです。

2,なぜ「私立医学部」で日にち・方式・募集数の変化が起きているのか

受験環境を俯瞰してみると、次のような背景が推察されます:

  1. 制度改革・学び直し課程世代の影響
    河合塾のレポート冒頭に、「2026年度入試は新課程第2年目」「旧課程生への配慮はなくなり、新課程分野が本格的に出題」される旨が指摘されています。
    これにより、大学入試の全体的な“枠組み”が安定化しつつある中、私立医学部も方式や募集に微調整をかけていると考えられます。
  2. 学費・経済的な側面および志望者の動向変化
    学費引き下げ、募集人員の再編、共通テスト方式の増枠など、募集数・方式・日程を大学側が“戦略的”に動かしているという印象があります。

特に一般方式の募集人員を抑える動きは、難関大学としてのブランド維持や入学者の「質」管理、共通テスト利用方式での国公立医学部志望者の獲得、といったことが考えられていると思われます。

  1. 方式多様化と志望者の方式選択の変化
    「共通テスト利用方式」の志望者増加(前年比114%)という数字は、受験生サイドの方式選定にも変化が出ていることを示しています。

私立医学部の共通テスト利用入試の志望者が増えているということは、国公立医学部志望者の「私立医学部併願」が増えることが予想されます。

3,受験生・保護者が押さえておくべき「対策ポイント」

それでは、これらの動向をふまえ、受験生・保護者の皆さんが具体的に備えておくべきポイントを整理します。

  1. 志望校の日程・方式を早期に確認

私立医学部の多くで、一次試験の日程・方式が微調整されています。特に、他大学との日程バッティングの可能性が増えているので、

  • 志望大学それぞれの「一般方式/共通テスト方式」「一次・二次の日程」をカレンダーに書き出す。
  • 1次試験日の重複を確認するだけでなく、2次試験日の重複も確認しておく。
  • 方式毎の募集人員・募集枠が変化している大学では、募集人員減少が志望動機や倍率にどう影響しうるかも考えて受験校を決める。

特に河合塾のレポートで指摘のあった大学(北里大、杏林大、昭和医科大、藤田医科大など)については、昨年度データと今年度変更点を比較し、志望校戦略を立てることを考えてください。

  1. 方式別対策を分けて考える

「一般方式」「共通テスト方式」では、志望者数・倍率・成績分布の傾向が異なっています。

  • 共通テスト方式志望者が増加しているため、共通テスト(そしてそれに続く個別試験)での得点力を早期に高める必要があります。
  • 一般方式で昨年と比較して大きな変化がないとはいえ、日程・募集枠・併願の状況が変化しているため、早めに過去問・傾向分析を開始すべきです。
  • 成績分布では「偏差値67.5以上」の上位層がやや増加しているというデータもあるため、上位層との差をつめる準備を、ボーダー近辺の人は特に意識しましょう。
  1. 学費・経済面・募集人員の動きを無視しない

大学が「学費引き下げ」「募集定員を適正化」等を行っているのは、受験生にとっては「チャンス」でも「警戒点」でもあります。

  • 学費が下がった大学では志願者が増加する傾向にあるため 競争率が上がる可能性があります。
  • 昭和医科大学や北里大学などの募集人員が減少する大学では「枠」が縮まることになり、例え人気が変わらなくても合格難易度が上がる可能性あります
  1. 模試・成績分布データを活用して“今の自分”を知る

河合塾の模試データでは、私立医学科一般方式の志望者成績分布で“ボーダーゾーン”が昨年と大きく変わっていないという指摘があります。
つまり、模試の結果をきちんと分析し、

  • 自分の偏差値・得点パターンが「合格圏内/ボーダー近辺/まだ上積みが必要」のどこにいるかを把握する。
  • 「ボーダーゾーン」付近にいるならば、今からのスパートや併願校の見直し、方式変更も考慮に入れる。
  • 上位層を目指すのであれば、得意科目をさらに伸ばし、弱点科目を徹底的に潰す。

模試の得点データ・過去問の成績を基に戦略を立てましょう。

  1. 面接・志望理由書・出願要項も“忘れずに”

データ・成績だけでなく、河合塾のレポートでは「面接試験」・「大学が求める人材理解」が合否において軽視できないことが言及されています。
特に私立医学部では、学力試験+面接・小論文など多面的な選抜方式であることも多いため、以下にも注意してください:

  • 各大学の「アドミッション・ポリシー」「募集要項」を読み込み、「この大学がどのような受験生を求めているか」を理解する。
  • 面接準備(志望理由、将来像、医師として何をしたいか)を具体的にしておく。
  • 出願書類(志望理由書・出願票など)も早めに準備。
  • 日程変更に伴い、出願締め切り日などが例年と異なることもあります。

このうち面接は入試要項に「面接試験の評価が低い場合は1次試験の成績に関わらず不合格とする」と明記する大学が増えています。

「医学部の面接だからこうだろう」という想像で行う表面的な面接指導でなく、医学部関係者と頻繁に会い「医学部の本音」が分かっている人の指導を受けることをおススメします。

医学部の面接は「将来、良き医師になるかを見極める」ために行うわけではないことを分かっているメルオンなどに相談するといいでしょう。

4,保護者の皆さまへ「知っておきたいポイント」

医学部入試は、受験生本人にとってハードな戦いであると同時に、保護者のご理解・サポートが非常に重要です。

私立医学部をめざすお子さまを持つ保護者のみなさまに、特に知っておいてほしいポイントを整理します。

  • 方式・日程の変化に敏感になること

日程バッティング・募集枠の変更は、併願戦略・出願校数に影響します。

「受験したい大学」の一次・二次日程を親子で確認しておくことをお勧めします。

  • 難易度変化の見通しを立てておくこと

学費引き下げの動きがある大学もありますが、それによって志願者数が増える可能性も十分にあります。

募集人員減少がある大学では倍率上昇の可能性もあります。

  • 模試・成績の見方を一緒に確認すること

模試の偏差値だけでなく、「志望校のボーダー」「併願校の位置づけ」「今から伸ばすべき科目」を親子で共有しておきましょう。

  • メンタルサポート・健康管理を忘れずに

特に私立医学部受験は後期を含めて長期戦になります。

日程・方式が変化する中で精神的な軸を保つこと、体調を崩さないよう生活リズム・睡眠・栄養にも気を配ってあげてください。

  • 将来像・動機づけを一緒に深めること

面接・志望理由書では「なぜ医学部か」、「将来どういう医師になりたいか」などが問われます。早いうちからお子さまの志望動機を確認し、「医学を学ぶ意義」「医師としての自分」を親子で話しておくと大きな助けになります。

「医学部を目指する子供を持つ親が読む本」

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5,大学別に見た私立医学部の動向

以下では、河合塾のレポートに明記されている私立医学科(医学部医学科)入試における大学別・方式別の特徴や変化を整理します。

埼玉医科大学

  • レポートに「志望者数が前年比113%と大幅に増加」との記述があります。

2025年度入試では志願者が大きく増加しており、埼玉医科大学に対する志望者は引き続き増加傾向と考えられます。

  • 志願者増の背景として、次のような要因も考えられます:

1次試験日程の重複は産業医科大学のみで、難易度も含めて「受けやすい」大学

  • 対策ポイントとして、「一般方式前期」を検討している受験生は、倍率上昇の影響を踏まえてより早期から対策を強める必要があります。

北里大学 医学部医学科

  • 本レポートで、「共通テスト方式を新設」として記載があります。

具体的には、北里大学で「共通テスト方式」が新たに設けられ、志望者数136 人という数字が挙げられています。

  • 加えて、北里大学の一般方式で募集人員が「75→65名」と減少しているというデータもあります。
  • このように北里大学医学部は「方式の新設(共通テスト方式)」「一般方式募集枠の減少」という2つの変化があるため、受験戦略上は非常に重要なポイントです。
  • 対策としては、「共通テスト方式」に目を付けている受験生は、共通テスト本番・個別試験両方の準備を早めに開始し、一般方式を狙う場合は募集枠減少を念頭に「安全戦略」も検討したほうが良いでしょう。
  • 北里大学医学部の1次試験日は順天堂大学医学部、東海大学医学部、金沢医科大学と重なっていますので、他大学の受験も検討するといいでしょう。
  • 東海大学医学部は理科1科目、数学はⅢC無しです。

杏林大学 医学部医学科

  • レポートでは、杏林大学でも「共通テスト方式募集人員を15→25名に増やし、志望者数は前年比160%」というデータが示されています。
  • さらに、一般方式では募集人員が87→79名と減少します。
  • つまり、杏林大学では共通テスト方式が拡充されており、そちらへの参入が志望者の中で増えているという「動向」が読み取れます。
  • 対策として

共通テスト利用方式を狙うなら「枠が増えた=チャンス」とも捉えられますが、志望者数自体が160%と増えており競争激化も覚悟すべきです。

一方、一般方式を選ぶ受験生は募集枠減少による倍率上昇の影響を考慮し、併願校の見直し・安全校の確保を検討しましょう。

藤田医科大学 医学部

  • 藤田医科大学では「学費を6年間で約30%引き下げる措置」が報じられており、その影響で志願者数が前年比122%と増加しています。
  • 学費の低下は、私立医学部受験生・保護者にとって大きな関心ポイントであり、志望先としての魅力度を高めたと考えられます。
  • ただし、志望者増=倍率上昇という構図になりやすいため、対策としては“他大学との差別化”や“科目別で得点を確保する”ことが重要です。

昭和医科大学 医学部

  • 昭和医科大学医学部でも新たに学校推薦型選抜を実施することから、一般選抜の募集人員が101→88名と大幅な減少となります。
  • 募集人員の減少は、合格枠が縮まる=倍率上昇が予想されるため、地域枠での受験も考えるといいでしょう。

ただし、地域枠は卒業後の「義務」がありますので、慎重に検討してください。

  • 対策として、併願校戦略において「この大学が第一志望なら、他大学の安全校を早めに確保」「この大学に合格できる学力ライン(偏差値/得点)を見極めておく」ことが大切です。

6,最後に、冷静な判断で戦略を立てよう

河合塾のレポートは、私立医学部入試において「大きな変化」というよりも「微調整・方式多様化・日程のズレ」といった「変わりゆく環境」を示しています。

重要なのは、この変化を「機会」と捉えるか「リスク」と捉えるか、戦略的に判断することです。

受験生・保護者の皆さまには、次のような姿勢をお勧めします:

  • 一つの大学・方式に固執せず、併願校・方式の幅を持った戦略を。
  • 模試や過去問のデータをもとに「現時点の位置」を正確に把握し、戦略を立て直す。
  • 日程・方式・募集人員の“変化”を常にチェックし、志望校リストを更新する。
  • 学力だけでなく、出願書類・面接・志望動機といった“非学力”要素の準備を早めに進める。
  • 保護者も“伴走者”として、お子さまのモチベーション・体調・生活リズムを整える補助役に。

医学部受験は長く、そして非常に厳しい戦いです。

ただ、このレポートのデータが示す通り、「志望者が爆発的に増えて難化する」というわけではなく、「きちんと準備をすれば合格圏に入る余地がある」と言えます。

だからこそ、冷静に、かつ積極的に準備を進めましょう。

私立医学部を目指す皆さまの戦略立案と成功を、心よりお祈りしています。ご質問や、併願校戦略・方式比較などについて個別にご相談があれば、いつでもオンライン個別指導メルオンお声がけください。

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