【目次】
- 偏差値は絶対視しない—模試と医学部偏差値の正しい見方
・模試は私立医学部向けではない
・駿台・河合で偏差値が異なる理由
・偏差値を“参考値”として扱うポイント - 試験日程と受験ルートの作り方
・どの大学からスタートするかが重要
・前半は手堅く、後半は強気に攻める
・3日連続受験の限界と移動の注意点 - 科目配点と出題範囲の確認方法
・得意科目を活かせる大学を選ぶ
・数学ⅡBまでの大学(帝京・東海など)は大きな利点
・苦手科目の影響を最小限に抑える戦略 - 試験時間・問題量・記述式/マーク式の違い
・試験時間の短さが国公立併願者を悩ませる理由
・「時間内に合格点を取れるか」を基準に判断
・記述式とマーク式で求められる力が異なる - 問題の難易度・傾向と大学ごとの特徴
・基本〜標準問題を確実に取れるタイプ向け大学(帝京・福岡大など)
・獨協医科大学の「解きにくさ」はチャンスでもある
・難易度だけでなく“相性”で見る重要性 - 試験会場と移動の負担を考える
・移動があると疲れが倍増する
・東京など同一エリアにまとめるメリット
・試験会場が1か所しかない大学(例:川崎医大)は狙い目 - 学費と入試難易度の関係、学費改定への注意
・学費が高い大学ほど難易度は下がりやすい
・学費改定は受験生の動きを大きく変える
・家計と現実のバランスを考慮するポイント - 大学所在地と6年間の生活イメージ
・都会 vs 地方
・6年間どんな生活をしたいか(スキー・歴史など)
・生活環境が学習効率に与える影響 - 募集人員と受験生の流れを読む
・募集人員が多い大学ほどチャンスが増える
・試験日が重なると志願者が分散
・“受験生の動き”を予測した受験校選び - 共通テスト利用入試の考え方
・合否判定に使われる科目の確認が必須
・合格最低得点率は国公立医学部より高い場合も
・期待しすぎず、合理的な出願を - 後期入試も視野に入れる戦略
・前期同様に受験生の流れを読む
・募集人員が少なくてもチャンスは十分
・最後の逆転が起こりやすい後期の特徴 - まとめ:受験校選びは情報戦×自己分析
・受験生×保護者で考えるべきポイント
・合格のために“勝てるフィールド”を選ぶ
偏差値だけに頼らない、“勝てる受験ルート”の作り方
私立医学部受験では、「どの大学を受けるか」「どんな順番で受けるか」
この2つが合否を大きく左右します。
同じ学力でも、受験校の選び方・受験順の組み方で
- 合格を積み上げていける受験生
- 実力はあるのに、全落ちしてしまう受験生
に分かれてしまいます。
この記事では、多くの医学部受験生を見てきた視点から、
- 偏差値の見方
- 試験日程と受験ルートの組み方
- 配点・出題範囲・試験時間・問題量
- 問題の難易度と大学ごとの特徴
- 試験会場、学費、大学所在地、募集人員
- 共通テスト利用入試・後期入試の考え方
を、受験生と保護者の皆さん両方にわかりやすい形で解説していきます。
- 偏差値は「絶対的なもの」ではなく、あくまで参考指標
◆模試の問題は「私立医学部専用」ではない
まず押さえておきたいのは、
模試の問題は私立医学部を意識して作られているわけではない
という点です。
模試には、
- 私立医学部ではほとんど出題されないようなテーマ
- 難関国公立大レベルの細かい知識問題
が混ざっていることも多く、「模試の点数や偏差値=そのまま私立医学部の実力」
とは必ずしも言えません。
◆駿台と河合で“医学部偏差値ランキング”が違う理由
さらに、模試を主催する予備校によって受験層も違います。
- 駿台:成績上位の医学部志望者が多く、全体的に偏差値がシビア
- 河合:受験生の母数が広く、様々な成績の受験生が受けている
- ベネッセ:受験者のほとんどが現役生で偏差値は高めに出る
そのため、駿台と河合、ベネッセ進研で「医学部偏差値ランキング」が違うのは普通のことです。
「あの大学とこの大学、本当はどっちの大学の方が難しいの?」「どの医学部の偏差値ランキングが正しい?」と悩む必要はなく、
どれも“目安”として見るくらいがちょうど良いのです。
◆偏差値から何を読み取るか
偏差値から読み取るべきなのは、
- 大まかな「レベル帯」
- 自分の立ち位置(チャレンジ校・実力相応校・安全校)
くらいです。
偏差値は「志望校を絞り込むためのひとつの材料」であって、
合否を決める決定打ではありません。
具体的な医学部の受験校を考える際にはむしろ、偏差値に加えて、
これから説明する「日程」「配点」「試験時間」「問題の相性」などを
総合的に見ていくことが大切です。
- 試験日程と「受験ルート」をどう組むか
◆どの大学から受け始めるかがメンタルを左右する
自分の受験日程表を作るときに、
「どの大学からスタートするか」は非常に重要です。
序盤で1校でも1次合格を取れると、
- 「自分は戦える」という自信がつく
- 本命校の試験にも前向きな気持ちで臨める
という大きなメリットがあります。
逆に、序盤で不合格が続くと、
実力があってもメンタルが崩れやすくなります。
◆基本戦略:「前半は手堅く、後半は強気に」
おすすめの組み方は、
- 前半:合格可能性の高い大学(安全〜実力相応)を中心に置く
- 中盤:本命校・第2志望校を配置する
- 後半:チャレンジ校や後期入試で勝負する
という流れです。
序盤で1次合格を1つでも取っておくと、その後の戦い方がまったく変わります。
◆3日連続受験は多くの受験生がギリギリ許容ライン
経験的に言うと、
- 3日連続受験くらいまでは、こなせる受験生が多い
です。
ただし、ここで重要なのが移動の有無です。
- 同じ都市・同じエリア内での3連戦 → まだ現実的
- 東京 → 関西 → 九州…のように移動が入る3連戦 → 疲れは倍増
移動が増えるほど、
- 睡眠時間が削られる
- 朝の移動ミス・遅刻リスク
- 体力と集中力の消耗
- 環境の変化による気疲れ
が一気に増えます。
日程表を作るときは、「距離」と「移動時間」も必ず一緒に書き込むようにしましょう。
- 科目ごとの配点「+出題範囲」を必ず確認する
◆配点は「どこで勝負するか」を決める重要情報
医学部は大学によって、
- 英語の配点が高い大学(順天堂大学、東邦大学など)
- 英語と数学の配点が高い大学(日本医科大学、杏林大学、愛知医科大学、関西医科大学など)
- 各科目同じ配点の大学(昭和医科大学、東京医科大学、大阪医科薬科大学、福岡大学など)
大学によって配点バランスが大きく違います。
例えば、
- 英語が得意な受験生:英語高配点の大学は「狙い目」
- 数学が苦手な受験生:数学配点が相対的に低い大学を優先
- 理科が武器になる受験生:理科で差がつきやすい大学を選ぶ
といった形で、自分の得意科目を活かせる大学を選ぶことが戦略になります。
◆出題範囲も細かくチェックする
配点と同じくらい大事なのが出題範囲です。
例えば数学なら、
- 「数学ⅠAⅡBまで」で出題が完結する大学
(例:帝京大学・東海大学などは数学ⅡBまでが範囲) - 数学ⅢCまで出る大学
では、必要な勉強量も、受験生の負担も変わってきます。
まだ数学Ⅲが十分仕上がっていない受験生にとっては、
数学ⅡBまでの大学は大きな追い風になります。
逆に、数学ⅢCまでしっかりやってきた受験生は、
数学ⅢCがしっかり出る大学で「差をつける」という戦い方もあり得ます。
データの分析が試験範囲に入っているかも確認してください。
物理では、原子を確認してください。
- 試験時間・問題量・記述式かマーク式か
◆「時間内に合格点が取れるか」がすべて
私立医学部の試験は、国公立医学部に比べて試験時間が短いことが多いのが特徴です。
その結果、
国公立医学部併願者が、私立医学部の入試で苦戦するケースがよくあります。
- 国公立:じっくり考える記述式が多く、試験時間も比較的長め
- 多くの私立医学部:時間が短く、問題量が多く、スピード勝負になりがち
「実力はあるのに、時間が足りなくて点数が取り切れない」
という状況になりやすいのです。
◆記述式とマーク式の違いも見逃さない
試験形式が
- 記述式中心の大学
- マークシート中心の大学
でも、求められる力が違います。
- 記述式:途中式・論理展開・表現力が問われる
- マーク式:計算力・処理スピード・ミスの少なさが問われる
これも、過去問を解いてみるとすぐに体感できます。
◆過去問で必ずチェックすべきポイント
- 制限時間内にどこまで解き切れるか
- 「全部解けなくても合格点には届きそうか」
- 記述かマークか、自分はどちらが得意か
「この試験時間で合格最低点を超えられそうか?」
という視点で、各大学の相性を見ていきましょう。
- 問題の難易度・傾向と大学ごとの特徴
◆「難問は解けないけれど、基本〜標準なら確実に取れる」タイプの受験生へ
受験生の中には、
- 難問・奇問はなかなか解けない
- その代わり、基本〜標準問題ならほぼ取りこぼさない
というタイプが多くいます。
こうしたタイプは、
問題レベルが「基本〜標準」を中心とする大学と非常に相性が良いです。
例としてよく挙げられるのが、
- 帝京大学医学部
- 福岡大学医学部
など、
標準問題を確実に積み上げるタイプの問題構成がメインの大学です。
「上位層だけが解ける超難問で差をつける」というより、標準問題をミスなく解くことが合否を分ける大学を選ぶと、自分のタイプに合った戦い方ができます。
◆獨協医科大学のような「解きにくい」問題をどう考えるか
一方で、入試難易度(偏差値)としては比較的低めなのに、問題が特徴的で解きにくい大学もあります。
その代表例としてよく挙げられるのが、獨協医科大学です。
- 問題文の構成が独特
- 初見では「何を聞かれているのか」が掴みにくい
- そのため「解きにくい」と感じる受験生が多く、受験を避けがち
という傾向があります。
しかし大切なのは、「解きにくい」と感じるのはあなただけではないということです。
- みんな同じ問題を解いている
- 受験生全体が「解きにくい」と感じている
のであれば、そこで粘って対策した受験生には大きなチャンスがあると言えます。
「解きにくそうだから避ける」のは、実は非常にもったいない選択です。
- 試験会場と移動の負担を甘く見ない
◆移動が入ると疲れは“体感2倍”になる
同じ3連戦でも、
- すべて都内の会場で受験
と - 初日:東京、2日目:名古屋、3日目:大阪
では、疲れ方がまったく違います。
- 試験で疲れ切ったところでの移動
- 慣れない土地でのホテル・試験会場までの道順探し
- 交通機関の遅延リスク
などを考えると、移動が1つ入るだけで、疲労感は体感2倍になります。
◆「なるべく同じ場所で受ける」という戦略
可能であれば、
- 東京圏で受けられる大学を固めて受験
- あるいは関西圏でまとめて受験
というように、「受験エリアを固める」ことを意識すると負担が減ります。
◆会場が1か所しかない大学は「受けづらい=狙い目」になることも
逆に、試験会場が1か所のみで、受けにくい大学というのも存在します。
川崎医科大学のように、
- 試験会場が倉敷市しか設けられていない
- どの受験生にとってもアクセスが良いとは言えない
- 前日、翌日の他大学受験が難しくなる、
「受けにくさ」の分だけ志願者が減り、難易度が相対的に下がる傾向があります。
学費が高いこともあって、駿台も河合塾も「医学部で一番易しい大学は川崎医科大学」としています。
「行きにくいからやめておこう」と全員が思うわけではありませんが、
“あえてこうした大学を受験校に入れる”のは、戦略として十分アリです。
- 学費と難易度の関係・学費改定には要注意
◆学費と難易度には一定の相関がある
私立医学部は、6年間トータルの学費にかなり差がありますが、一般的には
「学費が高いほど入試難易度は下がる」傾向が見られます。
- 学費が高い → 経済的に通える層が限られる → 志願者が絞られる → 難易度がやや下がる
- 学費が安い → 国公立併願者を含め「ここなら通える」という受験生が増える → 成績上位の志願者が増え、難易度が上がる
もちろん例外はありますが、
「学費の安い医学部=偏差値的にかなりの激戦」
と考えておくと大きく外れません。
◆学費改定があると受験生の動きが大きく変わる
近年、私立医学部では
- 学費を大きく値下げする大学
- 逆に、値上げを行う大学
も出てきています。
学費が変わると、
- 「ここなら現実的に通える」と考える家庭が増減
- それに伴って志願者数・難易度が変動します。
学費改定があった大学は、受験生の動きが大きく変わる「要注意ポイント」です。
最新情報をしっかりチェックしておきましょう。
- 大学所在地:6年間を過ごす環境をどう選ぶか
医学部は、6年間通い続ける学部です。
単に「受かればどこでもいい」ではなく、
- 都会での生活が合うのか
- 落ち着いた地方での生活が合うのか
も、本人のメンタル・学習ペースに大きく影響します。
◆自分の嗜好も大切にして良い
例えば、
- スキーが好き → 冬にスキー場に通える地域に惹かれる
- 歴史や文化に興味がある → 歴史的な街並みが残る都市に憧れる
など、勉強以外の時間をどう過ごしたいかも、6年間という長さを考えると、決して無視できない要素です。
学業が最優先であることは大前提ですが、「自分が気持ちよく暮らせる環境かどうか」も最終的な決め手のひとつになり得ます。
- 募集人員と「受験生の流れ」を読む
◆募集人員が多い大学は、それだけチャンスも増える
合格は基本的に、「試験の成績順に、上から何番目までが合格」というシンプルな構造です。
当然、募集人員が多い大学ほど、合格枠も広がります。
- 募集定員 64名の順天堂大学
- 募集定員 105名の東京慈恵会医科大学
であれば同じレベルの受験生が受けた場合、東京慈恵会医科大学の方が合格可能性が広がりそうなのはイメージしやすいと思います。
とは言え、それでも東京慈恵会医科大学の難易度は慶應義塾大学医学部(募集人員66名)に次ぐ最難関大学です。
最優秀の受験生が多く集まっているということです。
◆試験日が重なると受験生が分散する
もうひとつ重要なのが、試験日程の重なりです。
- 私立医学部1次試験日が同じ → 受験生が分散
3校の1次試験が重なれば、計算上は単独での1次試験の受験者数の、3分の1の受験者数となります。
受験校を決めるときは、
- 「その日他にどの医学部の試験があるか」
- 「受験生はどちらに流れそうか」
という視点で、受験生の動き(受験生の流れ)を読むことも重要です。
「受験生がどう動くか分かない場合はメルオンにご相談ください。
毎年、受験生の動きをピタリと当てています。
- 共通テスト利用入試は“おまけ”ではなく「仕組み」を理解して出願する
◆どの科目が合否判定に使われるかを確認する
共通テスト利用入試では、大学ごとに
- どの科目が判定に使われるか
- どの科目を何倍して評価するか
が異なります。
例えば、
- 私立医学部入試と同じように英語、数学、理科2科目で合否判定をする大学
- 国公立医学部と同じように英語、数学、理科2科目に加え国語と地歴公民も加えて合否判定をする大学
などがあり、自分の得点状況によって有利不利が変わります。
併せて、英語でのリスニングの扱いも大学によって異なります。
◆合格最低得点率は国公立医学部を上回ることも
私立医学部の共通テスト利用入試は、
- 出願しやすい(学力試験は共通テストの場合が多い)
- 募集人員は非常に少ない(北里大学医学部は5名)
- 結果として、合格最低得点率が国公立医学部を上回ることもある
という特徴があります。
つまり、「受かればラッキー」くらいの気持ちで出願するのがちょうど良い方式です。
期待しすぎず、
- 自分の得点と科目配点を冷静に見て
- 合理的にチャンスのありそうな大学だけを選んで出願
するのが現実的ですし、無理をして出願しなくてもいい医学部入試です。
- 前期だけでなく「後期入試」も戦略に含める
◆後期も「試験日程の重なり」と受験生の動きを読む
後期入試は、
- 募集人員が少ない
- 難しそうなイメージが強い
ため、「受かる気がしない」と候補から外してしまう受験生も少なくありません。
しかし実際には、
- 前期の段階で既に医学部に合格した受験生は、後期を受けない
- 試験日が重なる大学同士で受験生が分散する
という構造上、思った以上にチャンスが残っていることが多いのです。
前期同様、後期でも、
- どの大学同士が同じ日か
- どちらが本命扱いされやすいか
を考えながら、受験生の流れを読むことが大切です。
◆「最後の一発逆転」が起こるのが後期入試
毎年必ず、
- 前期は不本意な結果だった
- しかし後期入試で医学部合格を勝ち取った
という受験生が存在します。
入試期間中に大きく伸びる受験生は少なくありません。
前期のスタートから後期の最終まで毎日真剣勝負の1か月半ほどがありますので驚くほど伸びる可能性は十分にあります。
精神的にきつい時期ではありますが、戦略的に後期入試まで見据えておくことが、最終的な合格のカギになることも多いのが現実です。
- まとめ:受験校選びは「情報戦」+「自己分析」
ここまで見てきたように、私立医学部の受験校選びでは、
- 偏差値(模試)
- 試験日程と受験順(受験ルート)
- 配点と出題範囲
- 試験時間・問題量・記述式かマーク式か
- 問題の難易度・傾向と大学の特徴
- 試験会場と移動
- 学費と難易度・学費改定
- 大学所在地(6年間の生活環境)
- 募集人員と受験生の動き
- 共通テスト利用入試の仕組み
- 前期・後期のバランス
といった要素を総合的に考える必要があります。
◆受験生と保護者で一緒に考えてほしいこと
- どの大学から受け始めれば、序盤で一次合格を取りやすいか
- 得意科目を最大限活かせる大学はどこか
- 無理のない移動・宿泊プランになっているか
- 家計と学費のバランスは現実的か
- 6年間、その土地で生活するイメージが持てるか
- 後期入試まで含めて「最終的にどこかに合格するルート」になっているか
私立医学部の受験校選びは簡単ではありません。
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