こんにちは。
トータルアドバイザーの鈴村です。
昨日は医学部面接と就活面接の違いについて書き
ましたが、もう1点、志望理由書の違和感につい
ても書いておきたいと思います。
医学部を受験する際に「志望理由書」を書かせる
大学は結構あります。志望理由の中にも「医師志
望理由」と「本学(その大学の)志望理由」があるの
で、それをきちんと区別して書くことが必要です。
志望理由書はそれ自体が点数化されることはあり
ませんが、面接の際の大切な材料になります。
よって、面接で聞かれて答えられないことは書い
てはいけませんし、逆に聞いてほしいことはどん
どん書いてアピールする必要があります。
さて、これは数年前からの傾向なのですが、志望
理由書を添削していると、
「私は小児科医になるのが将来の夢です。」
と自分が将来どんな医師になりたいか、といった
ことから書き始めている志望理由書を見かけるよ
うになりました。
別にそれが悪いとは言いませんが、そういう書き
出しで始まるからには、よっぽど小児科医を目指す
ようになった強烈な理由があるのだろうな、と思い
ながら読み進めていると、「子供が好きだから」
「小児科医が不足しているから」といった、ごく
普通の理由しか書かれていなくて、あれっ?と思う
ことが増えました。
志望理由書を書いた本人に聞いてみると、「先生が
そう書きなさいと言った」「自分のなりたい将来像
から書き始めるのがいいのかと思った」という答が
返ってきて、最初は不思議に思っていたのですが、
ある時、謎が解けました。
今の時代は(なんて書くと偉そうですが)、職業体験や
将来の夢など、中学や高校の時から自分が将来何に
なりたいかを意識した教育が頻繁に行われています。
そういった教育の場では、おそらく「自分が将来、
何になりたいか」といったことが非常に重要視され
ているのでしょう。
例えば、推薦やAO入試でエントリーシートや志望
動機書を提出する時も「この大学に行きたい、この
学部に行きたい」だけではなく、「この大学、この
学部に行って、自分が何を学びたいか、そして将来
何になりたいか」といった具体性を求められるのだ
と思います。
けれど、医学部というのは、ごく稀に厚生労働省で
医系技官として働くなどのルートもありますが、入
学者のほとんどが将来「医師」になるという特殊な
学部です。
(そういえば、海道尊のチーム・バチスタシリーズに
出てくる白鳥圭輔はこの医系技官ですね)
また将来、どの診療科に進むかも、新臨床研修医制
度になってからは、医学部を卒業した後に、初期研
修医として各科を回りながら決めることも珍しくな
くなりました。
以前、ある医学部の先生の講演会では「医学部入学
時に、進みたい診療科を決めている学生は全体の3
分の2、さらにその半分は最初に決めていた診療科
とは異なる科に進む」とおっしゃっていました。
(今はもっとこの比率は下がっているかもしれません)
そういった現状の中で、出願書類に医師志望理由を
書く時に「私は将来○○○科に進みたい」といった
具体的なことから書き始める必要はありませんし、
それよりはなぜ医師を目指そうと思ったのか、その
きっかけ、動機のようなものがよほど大切です。
医学部の教員が面接で聞きたいのも、まさにその部
分です。医師になりたいと思ったきっかけ、理由が
しっかりしていればしているほど、膨大な量の医学
の勉強にも耐えられるからです。
もちろん、面接で将来進みたい診療科を聞かれたら、
自分が現時点で興味のある診療科を答えればいいで
しょう。ただし、それが1つである必要はないし、
複数の診療科を挙げて「入学して医学を実際に学ん
でから決めたい」で何の不都合もありません。
ここにも、入学してから将来の職業を決める他の
学部と医学部や他の医療系学部の違いが、如実に
表れています。
他の学部は就活を通して、自分が就く職業を決め
ていきますし、入社当時の業種や職種が永遠に続
くわけでもありません。そもそも、内定時に希望
の職種や部署を提出することはできますが、その
通りにいくとは限りません。
人事部に勤めていた経験から言うと、採用時には
既に「この学生は◎◎向き」と大体の職種や部署
をイメージしているため、本人の希望は参考程度
にしか見ていませんでした。
医学部の志望理由書や面接で問われているのは、
なぜ医師を目指そうと思ったのか、その理由や
きっかけであり、そこにこそ具体性が求められ
ていることを忘れないでほしいと思います。
【参考記事】いつまでに自身の専門を決めるべき?(m3.com)
https://career.m3.com/kenshunavi/know-how/learn/002
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http://nyushi.melurix.com/archives/2297
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