目次
- はじめに
- 「経年変化分析調査」とは?
- 朝日新聞が一面トップで伝えた衝撃
- どのような教科で低下が見られたのか
- なぜ学力が低下しているのか
- 親として知っておきたい3つの視点
- 受験生の親にできる具体的な対応
- おわりに:今こそ親の出番
- はじめに
2025年7月31日、文部科学省が「全国学力・学習状況調査(いわゆる全国学力テスト)」の「経年変化分析調査」の結果を公表しました。このデータを受けて、翌8月1日の朝日新聞は朝刊一面トップで「子の学力大幅に低下」と報じ、大きな反響を呼びました。
特に受験生を持つ保護者にとっては、学力低下の原因や背景が気になるところではないでしょうか。「うちの子は大丈夫だろうか?」「塾に通っているのに成果が出ないのはなぜ?」と感じた方も多いかもしれません。
本記事では、この調査の要点と、親として知っておきたい現状、そして受験を控えた今、どのようなサポートが必要かを分かりやすく解説します。
- 「経年変化分析調査」とは?
この調査は、毎年行われる「全国学力・学習状況調査」の過去データと現在を比較し、児童生徒の学力や学習環境がどのように変化しているかを分析するものです。
対象は小学6年生と中学3年生で、国語・算数(数学)・理科の教科に加え、学習習慣や生活習慣、家庭環境、ICTの利用状況まで幅広く調べられています。
今回の2023年度版では、過去の調査(とくに2019年以前)と比べ、子どもたちの思考力や表現力を問う問題の正答率が大きく下がっていることが明らかになりました。
- 朝日新聞が一面トップで伝えた衝撃
朝日新聞は、次のような事実を報じています。
- 中3数学の記述問題の正答率が大幅に低下
- 国語においても、文章の要約や自分の考えを記述する問題で正答率が下がった
- コロナ禍による学習の遅れに加え、スマートフォンやゲームの使用時間の増加が影響している可能性がある
中でも注目すべきは、文部科学省が保護者への調査も同時に行っていた点です。保護者の回答から、後で触れるような傾向が浮かび上がりました。
- どのような教科で低下が見られたのか
学力の低下は、単に「点数が下がった」ということではありません。とくに以下の分野で問題が深刻です。
- 中学3年生:数学
- 記述問題(考え方や理由を説明する形式)の正答率が顕著に低下。
- 単なる計算力ではなく、「なぜそうなるか」を説明できない生徒が増加。
- 中学3年生:国語
- 複数の文章を読み比べたり、要点をまとめたりする力が低下。
- 自分の意見を論理的に書く問題での正答率が落ち込む。
- 小学6年生:理科
- 実験結果や観察をもとに「なぜそうなるか」を考察する問題で、正答率が下がった。
こうした問題は、まさに今後の大学入試や社会で求められる力と重なります。点数だけでは見えない「思考力の質」が問われているのです。
- なぜ学力が低下しているのか
調査結果から浮かび上がる要因は、以下の通りです。
① 勉強時間の減少
保護者への調査によると、塾などを含む平日の学習時間がコロナ前と比べて短くなっているという声が多く寄せられました。特に中学生では、1日1時間未満しか勉強しない生徒の割合が増加しています。
② スマホ・ゲームの時間の増加
同じく保護者の回答では、ゲームやスマートフォンに使う時間が長くなったという傾向が顕著でした。
文部科学省の分析によれば、
スマホやゲームに使う時間が長い生徒ほど、平均点が低い傾向がある
という相関が確認されており、これは全国的な傾向です。
③ 自主的な学習習慣の弱体化
「家で勉強するときに、自分で計画を立てて取り組んでいる」という質問に対して、「あまりしていない」と答えた割合が増えており、自律的な学びが定着していないことも課題です。
- 親として知っておきたい3つの視点
この状況を踏まえ、保護者として押さえておきたいポイントをまとめました。
- 「学力=暗記力」ではない
今問われているのは、考える力・説明する力・判断する力。単にドリルをこなすだけでは太刀打ちできません。
大学受験でセンター試験から共通テストへ変更になったように、大学受験は暗記に頼るのではなく、思考力・表現力を求める大きな流れの中にあります。
- 家庭の関わりが格差を生む
塾やICTよりも、「家での声かけ」「親の学習への理解や姿勢」が子どもの思考力に大きく影響します。
千葉大学教育学部長の藤川大祐教授は「親とコミュニケーションを取れていれば、子どもはスマホやゲーム依存になりにくい」、「スマホなどの開始時に使用時間などのルールを話し合い、守れなければ子どもと一緒にルールを見直すといい」と話しています。
- 時間の使い方は親子で設計すべき
スマホやゲームを「悪」と決めつけるのではなく、どう時間を使うかを一緒に考える機会が必要です。
- 受験生の親にできる具体的な対応
最後に、特に受験を控えたご家庭で実践できるアクションをご紹介します。
- デジタル以外の楽しさを教える
人と過ごす楽しさや夢中になれることを知るとメディア接触時間は減り、知的な活動に意欲が出ます。
- スマホ・ゲームのルールは“話し合い”で
頭ごなしに制限せず、「時間割を一緒に作る」「勉強のあとに楽しむ」など、納得感のあるルール作りを目指しましょう。
- 毎日の中に“対話”を取り入れる
ニュースや読書、学校の出来事などをきっかけに、「それってどう思う?」「なぜそう感じたの?」と問いかけてみてください。小さな会話が、大きな思考力につながります。
- おわりに:今こそ親の出番
学力の低下が叫ばれる今こそ、家庭の力が問われています。
塾に任せきりではなく、学校のせいにするのでもなく、家庭こそが「思考力・表現力」の土台を育む場所なのです。
勉強を無理にやらせる必要はありません。大切なのは、子どもの「なぜ?」を一緒に考え、応援する親の姿勢です。
時代が変われば、求められる学力も変わります。今こそ、「考える力」を育てる家庭づくりが必要とされています。
子どもの話をしてきましたが、受験生にも通用する話です。
総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(推薦入試)では、学力が無くても合格出来ると言われることもありますが医学部受験、歯学部受験ではこういった考えは全く通じません。
文系学部であれば大学を卒業することは難しくありませんが、医学部や歯学部では入学後の勉強は厳しく、4年ではなく6年を掛けて卒業します。
4年生では全国の医学生、歯学生が受けるCBTもあり、さらに卒業後には国家試験が待ち受けています。
医学部や歯学部では、基礎学力や学修能力は絶対的に必要です。
受験生をお持ちのご家庭では受験生のために、ご家庭で出来ることを考えてみてください。