ここ数年、大学受験の世界では「地方旧帝大に首都圏出身者が増えている」という大きな変化が起きています。北海道大学や東北大学、京都大学、九州大学といった名門国立大学では、かつては地元の進学校出身者が多数を占めていました。しかし現在は、首都圏の中高一貫校や進学校の生徒が急増し、学内の構成比まで変化しつつあります。
その背景には、首都圏の激しい受験競争、地方の人口減少、そして入試制度改革への対応力の違いがあります。さらに、医学部においては学費の安さを求めて首都圏の受験生が地方の医学部にも集中し、地域医療の担い手不足を深刻化させる問題も浮き彫りになっています。
この記事では、「なぜ首都圏出身者が地方旧帝大に進学するのか?」
「医学部で特に問題が深刻化しているのはなぜか?」
「受験生や保護者は何を意識すべきか?」
といった疑問に答えながら、最新の進学トレンドを分かりやすく解説します。これから大学受験を控える高校生とそのご家庭にとって、進路選びの参考になると思います。
目次
- 旧帝大とは?その特徴と地域での役割
- 首都圏高校から地方旧帝大進学が急増しているデータ
- 東京大学の出身地割合の変化
- 首都圏受験生が地方旧帝大を選ぶ3つの理由
- 教育格差と地域格差の広がり
- 医学部で特に深刻な首都圏流入問題
- 地域枠入試の仕組みとメリット・デメリット
- 受験生・保護者が今後意識すべきポイント
- まとめ ― これからの進学戦略とは
- 旧帝大とは?その特徴と地域での役割
「旧帝大(旧帝国大学)」とは、明治期に設立された日本を代表する国立大学群を指します。
北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・大阪大学・京都大学・九州大学の7校が該当し、いずれも研究力・教育力・知名度の高さから国内外で高い評価を受けています。
従来、これらの大学には地元の有力進学校から優秀な学生が多数進学し、「地域の知の拠点」としての役割を果たしてきました。
- 首都圏高校から地方旧帝大進学が急増しているデータ
ところが、ここ十数年でその状況が大きく変わりつつあります。
じゅそうけん(受験総合研究所)の2012年と2020年の比較調査によると首都圏の高校出身者が地方の旧帝大に進学するケースが急増しているのです。
- 北海道大学:361人 → 583人
- 東北大学:375人 → 620人
- 京都大学:244人 → 365人
- 九州大学:61人 → 129人
この数字からも、地方の旧帝大で首都圏出身者の存在感が強まり、1.5倍〜2倍に増えていることが分かります。
一方、大阪大学や名古屋大学は大都市圏に位置し、地元の進学校からの進学者が依然として多数を占めています。
- 東京大学の出身地割合の変化
首都圏の中心にある東京大学も例外ではありません。
代々木ゼミナールが公表するデータによると、2025年度の東京大学前期合格者に占める関東(1都6県)出身者は61.7%。ここ20年ほど、関東出身者の割合は56〜60%で推移しており、逆に地方出身者の割合は減少傾向にあります。
これは「首都圏の生徒が地元にとどまり、地方出身者が入り込みにくくなっている」と考えられます。関東と言っても、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏の受験生が多くを占めていると考えていいと思います。
- 首都圏受験生が地方旧帝大を選ぶ3つの理由
なぜ首都圏出身の受験生が地方大学へ進学するケースが増えているのでしょうか?大きく分けて3つの理由があります。
- 地方の人口減少
→ 地元の受験生そのものが減り、首都圏からの流入が目立つように。 - 首都圏の受験競争の激化
→ 中学受験で私立一貫校に進学した中堅層でも、高校卒業時には地方トップ校と同レベルの学力に達するケースが増加。(当然、上位層は更に上の学力となるでしょう)
東大・一橋大・東京科学大に届かない層が「模試判定で合格可能性が高い地方旧帝大」を狙う流れに。 - 入試制度改革への対応力の差
→ 首都圏の高校は総合型選抜や推薦型入試への対策を進めている一方、地方高校はキャッチアップが遅れがち。
結果として、入試戦略面でも首都圏の生徒が優位に立ちやすい。
- 教育格差と地域格差の広がり
文部科学省が2025年に発表した「2040年の大学進学率予測」では、地域格差の深刻さが示されています。
- 東京都:80.5%
- 京都府:75.6%
- 奈良県:69.1%
- 大阪府:69.0%
- 山口県:38.5%
- 宮崎県:41.2%
- 鹿児島県:41.6%
首都圏や関西都市圏では高い大学進学率が予想される一方、九州・東北などでは40%前後にとどまる見込みです。
こうした地域格差が、今後さらに首都圏生徒の「地方流入」を加速させる要因になると思われます。
- 医学部で特に深刻な首都圏流入問題
地方国公立大学の医学部では、この傾向が特に顕著です。
- 私立医学部6年間の学費:約3200万円
- 国公立医学部6年間の学費:約350〜400万円
学費の差は圧倒的で、首都圏の優秀層が地方の国公立医学部に集中しています。
ある東日本の医学部では、合格者の半数が関東出身者というケースもあります。
ただし、卒業後に地元で勤務せず東京に戻る学生が多く、地域医療に貢献しないという深刻な問題を生んでいます。
- 地域枠入試の仕組みとメリット・デメリット
こうした状況に対応するため、2008年以降、医学部に「地域枠入試」が導入されています。
- 仕組み:出身地や卒業後の勤務先を条件とし、一定期間その地域で勤務を義務付ける(多くの場合は医学部卒業後9年間)
- メリット:地元生徒が合格しやすくなる、地域の医師不足を緩和できる
- デメリット:首都圏出身者にとっては卒業後の義務条件が出願を躊躇させる
医学部の地域枠入試は、一般枠に比べ難易度が低くなるのが一般的です。これは医学部合格に自信のある成績上位層は、卒業後の「縛り」を嫌って地域枠を敬遠する傾向があるからです。
医学部だけでなく、今後は他学部でも地域定着を促す仕組みが導入される可能性があります。
- 受験生・保護者が今後意識すべきポイント
受験生や保護者の立場で考えると、次の点を意識して進学戦略を立てることが重要です。
- 志望校の難易度をチェック
- 地域枠入試の有無や条件を確認
- 卒業後の進路・キャリア形成まで考慮
- 模試の判定に振り回されず、学力・適性を踏まえた選択をする
- まとめ ― これからの進学戦略とは
首都圏出身者が地方旧帝大や医学部に進学する流れは今後ますます強まると考えていいでしょう。
医学部の受験校の選び方は、これまで以上に「地域差」や「制度の仕組み」を理解したうえで判断する必要があります。
受験生・保護者へのアドバイス
医学部入試は変化を続けています。最新の入試制度の特徴を踏まえた情報収集を行ってください。特に医学部入試の場合は、地域枠や将来の勤務地の制約も含めて検討することが不可欠です。
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