【目次】
- はじめに
- 地域枠とは?(全国の地域枠制度の基本)
- 新潟県地域枠の概要
- 全国の大学で実施されている新潟県地域枠(出身地制限なし)
- 今回の変更:関西医科大学が地域枠を廃止
- 廃止の背景:なぜ関西医科大学は枠を減らすのか
- 今後の見通し:全体の定員推移と他大学の動き
- 受験生・保護者の皆さんへのアドバイス
- さいごに
- はじめに
「関西医科大学が新潟県地域枠を廃止する」との報道(2025年9月1日発表)を受け、「医学部は定員削減に向かうのか?」不安や疑問をお持ちの受験生・保護者の方も多いことでしょう。
今回のブログでは、まず「地域枠制度とは何か」を整理したうえで、新潟県地域枠の特徴や今回の変更内容についてわかりやすく解説します。
- 地域枠とは?(全国の地域枠制度の基本)
「地域枠」とは、医師不足が深刻な地域で、将来その地域に勤務することを条件に、医学部入試に特別枠を設ける制度です。
- 目的:地域の医師不足解消と医療体制の安定化
- 入試形態:推薦型・一般選抜など大学によって異なる
- 修学資金制度:在学中に自治体から奨学金(修学資金)が貸与される
- 返還免除条件:卒業後、指定地域の医療機関、または指定診療科で一定期間(多くは9年間程度)勤務すれば返還不要
- 種類:
- 出身地制限あり(県出身者に限定)
- 出身地制限なし(全国から応募可)
つまり、「地域枠=将来の一定期間の勤務と引き換えに、入試機会と学費支援を得られる制度」と考えると理解しやすいでしょう。
医学部の地域枠と一般枠の難易度を比べた場合、地域枠の方が難易度は下がる傾向にあります。
例えば昭和医科大学医学部の一般選抜で一般枠の1次試験合格最低点は400点満点の232点でした。
新潟県地域枠の1次試験合格最低点は400点満点の220点、静岡県地域枠の1次試験合格最低点は400点満点の205点、山梨県地域枠の1次試験合格最低点は400点満点の203点でした。
一般枠と山梨県地域枠の合格最低点には29点もの差があり、4科目ですから1科目7.3点の差になります。
29点違えば400位程度は順位が変わると思います。
他の大学の医学部でも地域枠は一般枠に比べ難易度が下がる傾向にあります。
地域枠の方が合格最低点が低くなるのは、自分の学力に自信のある受験生は一定期間と言えども自分の将来に対する制限を嫌うからです。
地域枠を受ける受験生は「少しでも医学部合格のチャンスを広げる」という考えの受験生も少なくありません。
- 新潟県地域枠の概要
新潟県地域枠は、全国の中でも特徴的な仕組みを持っています。
- 応募資格:出身地を問わず全国から応募可能
- 修学資金の貸与:6年間で最大約3,660〜3,700万円(月額50万円前後、大学による)
- 返還免除条件:卒業後に新潟県内の指定医療機関で9年間勤務すれば返還免除
- 目的:新潟県内で働く医師を安定的に確保するため
この制度により、新潟県外出身の学生でも「地域医療に携わりたい」という意思があれば挑戦できる点が魅力です。
- 全国の大学で実施されている新潟県地域枠(出身地制限なし)
新潟県地域枠は複数の大学に設置されており、出身地に関係なく応募可能です。
- 新潟大学
- 順天堂大学
- 昭和医科大学
- 東邦大学(推薦・一般両方)
- 東京医科大学
- 杏林大学
- 関西医科大学(※今回廃止)
- 日本大学(特定市町村と連携し修学資金を貸与)
たとえば、日本大学医学部の「新潟県重点コース」では、4名枠で年間約610万円(6年間で約3,660万円)の貸与があり、県内勤務で返還免除となります。
- 今回の変更:関西医科大学が地域枠を廃止
2026年度(令和8年度)入試から、関西医科大学の新潟県地域枠(2名分)が廃止されます。
これにより、新潟県地域枠の全体定員は12大学77名に減少する見込みです。
また、関西医科大学の定員は2名減となります。
- 廃止の背景:なぜ関西医科大学は枠を減らすのか
報道によると、関西医科大学側から「指導にあたる医師を確保するのが難しい」との理由で廃止要請があったとされています。
医師の働き方改革により、学生指導が厳しくなったようです。
地域枠は学生支援と地域医療貢献を両立させる制度ですが、大学にとっては教育・指導体制の確保が大きな課題です。
その結果、今回の縮小につながったと考えられます。
- 今後の見通し:全体の定員推移と他大学の動き
- 2026年度(令和8年度):関西医科大学の2名分が減少し、12大学77名へ
- 2027年度(令和9年度):新潟大学が一般選抜の定員を10名減らし、地域枠を増加予定
つまり、短期的には枠が減少するものの、今後は新潟大学を中心に新潟県地域枠が拡大する方向性も示されています。
とは言え今後、地域枠は全体として減少に向かっていくことが予想されます。
- 受験生・保護者の皆さんへのアドバイス
観点 | アドバイス |
情報収集 | 各大学の公式HPや新潟県の最新情報を随時チェックする |
戦略の再検討 | 関西医科大学以外の地域枠(順天堂・杏林・昭和医科など)も検討 |
一般枠対策 | 地域枠の減少に備えて、一般枠での合格に向けた勉強を進める |
資金面 | 地域枠以外の奨学金制度も調べ、経済的リスクを分散する |
キャリア設計 | 9年間の勤務は長期なので、ライフプランと合わせて慎重に検討する |
- さいごに
新潟県地域枠は、出身地を問わず利用できる数少ない制度で、多額の修学資金支援を受けられる点で受験生にとって大きな魅力があります。
今回、関西医科大学の枠廃止は一見マイナスですが、今後は新潟大学を中心に増枠の動きもあり、チャンスが広がる可能性も残されています。
受験生・保護者の皆さんは「地域枠」と「一般枠」の両方を意識しながら、柔軟に戦略を立てることが合格への第一歩となるでしょう。
なお、自治医科大学でも地域枠とよく似た修学資金貸与制度があります