医学部入試

医学部入試は突出して難しい!! 国立大学で徹底検証してみました

目次

  1. はじめに:医学部入試は本当に特別なのか
  2. 四国の国立大学の比較データ
  3. 旧帝国大学の比較データ
  4. 医学部が突出して難しい理由
  5. 保護者・受験生へのメッセージ
  6. まとめ
  1. はじめに:医学部入試は本当に特別なのか

「医学部入試は難しい」と言われますが、果たしてそれは単なるイメージでしょうか?

今回は国立大学の合格最低点を調べて具体的に考えてみます。

国立大学のデータを見比べると、医学部は他学部より突出して高い得点率を要求されることがはっきり分かります。

  1. 四国国立大学の比較データ

では最初に四国の4つの国立大学の学部ごとの合格最低点を見てみましょう。

各大学医学部医学科の合格最低点と工学系学部の合格最低点、合格最低得点率を比べてみました。

大学 学部 満点 合格最低点 得点率
愛媛大学 工学部 1100 604.42 53.9%
愛媛大学 医学部 1200 925.67 77.2%
徳島大学 理工学部 1250 449.9 36.0%
徳島大学 医学部 1300 997.6 76.7%
香川大学 創造工学部 1200 630.2 52.5%
香川大学 医学部 1400 999.1 71.4%
高知大学 理工学部 1550 641.0 41.4%
高知大学 医学部 1950 1487.2 76.6%

医学部医学科と他の理系学部では小論文や面接などを含めた配点が異なりますので満点(総合点)の点数も違います
得点を単純に比較できませんので、合格最低得点率で比較してみました。

4つの大学とも医学部医学科と工学系学部との合格最低得点率の違いは明らかです。

最も差が大きいのは徳島大学で医学部の最低得点率は76.7%で、理工学部の最低得点率は36.0%で、その差は40,7ポイントもの差があります。

最も差の小さい香川大学では医学部医学科の合格最低得点率は71.4%、創造工学部の合格最低得点率は52.5%で、その差は18.9ポイントになります。

同一大学内でも20〜40ポイント程度の差が見られ、医学部の難しさがはっきりと分かります。

ちなみに河合塾の偏差値ランキングを見ると下記のようになっています。

 

大学 学部 偏差値
愛媛大学 工学部 42.5
愛媛大学 医学部 65.0
徳島大学 理工学部 42.5
徳島大学 医学部 62.5
香川大学 創造工学部 42.5
香川大学 医学部 62.5
高知大学 理工学部 42.5
高知大学 医学部 62.5

 

四国の4つの国立大学工学系学部の偏差値は、いずれも42.5とされています。

一方で医学部医学科は愛媛大学医学部が65.0、徳島大学と香川大学、高知大学の医学部医学科は偏差値62.5とされています。

 

偏差値を見ても、その差は非常に大きいことがよく分かります。

 

ちなみに河合塾では東京大学理科1類の偏差値は67.5としていますので、愛媛大学医学部医学科は東大のワンランク下となっています。

 

国立大学であっても、どの大学でもどの学部であっても難易度が高いというわけではありませんが、医学部だけはどの大学であっても大変な難関です。

 

さらに河合塾の国立大学共通テストボーダーライン得点率を見てみましょう。

 

大学 学部 得点率
愛媛大学 工学部 54%
愛媛大学 医学部 82%
徳島大学 理工学部 53%
徳島大学 医学部 83%
香川大学 創造工学部 55%
香川大学 医学部 81%
高知大学 理工学部 50%
高知大学 医学部 80%

 

大学によって、共通テストと2次試験の比重が異なりますので、そこも忘れないで下さい。

 

共通テストのボーダーライン得点率を見ると、工学系学部では共通テストで半分程度取れれば合格ラインとなりますが、医学部の場合共通テストで半分では手も足も出ない状況です。

 

医学部で合格するためには、共通テストで8割は必要になってきます。

 

共通テストのボーダーライン得点率を見ても、医学部医学科が他の学部に比べて突出して難しいことが分かります。

 

3. 旧帝国大学の比較データ

では、国立大学難関校ではどうでしょうか?

国立大学の中でも難関と言われる旧帝国大学の医学部医学科と工学部の難易度を比較してみましょう。

大学 学部 満点 合格最低点 得点率
名古屋大学 工学部 1935 1287 66.5%
名古屋大学 医学部 2750 2160 78.5%
大阪大学 工学部 1025 587.0 57.3%
大阪大学 医学部 2000 1475.8 73.8%

難関の旧帝国大学では工学部でも合格するためには高い得点率が必要ですが、医学部は更に上の得点率が必要になります。

河合塾の偏差値ではこうなります。

大学 学部 偏差値
名古屋大学 工学部 60.0
名古屋大学 医学部 67.5
大阪大学 工学部 60.0
大阪大学 医学部 70.0

 

さすがに旧帝国大学では工学部でも偏差値60と非常に高い偏差値となっています。

しかし、医学部はそれを上回る偏差値で、名古屋大学医学部は東大理1と同じ偏差値67.5で、大阪大学医学部に至っては東大を上回る偏差値70とされています。

 

「東京大学理科1類や理科2類に合格できる程度のレベルでは、大阪大学医学部医学科に合格するレベルには足りない」と言うことです。

 

共通テストのボーダーライン得点率も見てみましょう。

 

 

大学 学部 得点率
名古屋大学 工学部 79%
名古屋大学 医学部 89%
大阪大学 工学部 80%
大阪大学 医学部 90%

 

名古屋大学も大阪大学も医学部のボーダーライン得点率の高さは大変なものがあります。

 

大阪大学医学部の共通テストボーダーラインが90%ということは国語、英語、数学、理科、地歴公民の全てで9割以上を取らなければならない、ということです。

 

国立医学部に合格するためには、「オールラウンドの学力が必要」と言うことです。

4. 医学部が突出して難しい理由

  1. オールラウンドの学力が必要

国立大学医学部に合格するためには共通テストで8割以上の得点が求められます。

理系受験生が苦手とすることの多い、国語や地歴公民といった教科も落とせません。

全ての教科で高い学力が求められますが、これをクリアすることは非常に難しいことです。

  1. 失敗の許されない入試

国立大学医学部に合格するためには、まず共通テストでしっかりとした得点を取ることが必要です。

さらに各大学での「個別学力試験(2次試験)」でも強力なライバルたちの上を行く得点が必要となります。

共通テストと2次試験の2回の試験で失敗は許されません。

強靭な精神力も必要となります。

  1. 面接・小論文の負荷

医師としての適性・倫理観を問う小論文と面接が加わり、学力試験の準備に加えて小論文や面接の準備にも時間を取られます。

  1. 志願者層の厚さ

最近の受験生は浪人を避ける傾向にあり、現役生中心の戦いとなるのが一般的です。

しかし、医学部に限っては浪人という選択をする受験生も多く、現役生に比べ1年ないし数年多く受験勉強をしている浪人生も多く受けて来ます。

5.保護者・受験生へのメッセージ

  • 「地方国立だから易しい。なんとかなる」は全くの誤解です。

旧帝国大学でも地方国立大学でも、医学部は常に別格です

  • 共通テストと大学での2次試験の両方で実力を出し切ることが欠かせません。最後まで1点を積み上げる設計と反復、そして自信が必要。
  • 学力試験対策に加え、面接・小論文は早期に着手して仕上げ切ることが欠かせません。
  • 直前期は得点源の確保(数学の計算精度・理科の頻出テーマ・英語の読解速度)に集中。

過去問を上手く使って医学部合格を現実のものとしてください。

 

6. まとめ

これまで見てきたように、各種データが示すとおり、医学部(医学科)は国立大学の中でも突出して難しい学部・学科です

医学部人気は当面続くと考えていいでしょう。

この状況に対応するためには、日々の周到な準備が必要です。

苦手科目の克服と穴のないバランスのいい学力の構築、基本的・標準的な問題は早く正確に解くことの出来る学力、難し目の問題も解き切る力、ケアレスミスを無くす努力、マーク式と記述式どちらにも問題なく対応する準備、1年を通じてモチベーションを維持すること、本番に強い精神力、こういったことを意識して医学部合格に向けて日々の努力を積み重ねてください。

また、保護者の寄り添い、見守りも重要です。

「こんな成績で医学部に合格出来ると思ってるの!!」、「医学部に受かる気あるの?!」、「お兄ちゃんは、もっとやってた」などの言葉は言いたくなることもあるでしょうが、かえってマイナスになりがちです。

こういった言葉は控える様にしてください。

保護者の皆さんも、ぜひ受験生の助けとなって下さい。