受験生・保護者が知っておくべき負担軽減制度と大学の対応状況
目次
- はじめに:医学部・歯学部志望者こそ避けられない「二重払い」
- ニュース概要:東京都私立大120校のうち、制度導入はわずか4校
- そもそも「入学金の二重払い」とは?
- 二重払いが医学部・歯学部受験生に特に重くのしかかる理由
4-1. 医学部・歯学部は受験数が多く“滑り止め”も高額
4-2. 家庭の経済差が受験チャンスに直結しやすい
4-3. 地方受験生ほど不利になる構造 - 文部科学省が求める“負担軽減策”とは?
5-1. 入学金の金額抑制
5-2. 納付時期を複数回に分ける
5-3. 一部返金制度 - 調査の詳細:導入している私立大はたった「4校」
- 355億円に上る「入学しない受験生からの入学金」—どれだけ異常か?
- 医学部・歯学部受験での“具体的なリスク”と“よくある失敗例”
8-1. 第1志望の合格発表が遅い問題
8-2. 複数学部の出願で累積費用が100万円超
8-3. 「医学部専願」のつもりが資金不足で失速 - 受験生・保護者ができる実践的な対策
9-1. 事前に「入学金返還制度の有無」を必ず調べる
9-2. 出願大学の“合格発表日”と“入金締め切り”を一覧化する
9-3. 家庭の予算上限を明確化しておく
9-4. 奨学金・教育ローンを早めに情報収集
9-5. 医歯系専門の塾・予備校に相談する - 事前に知っておくべき大学名:返金制度を導入している4大学
- 入学金は「入学意思の証明にならない」—制度の本質的な問題とは
- 今後どうなる?制度改善への動き
- まとめ:情報武装が“合格のチャンス”を生む
- はじめに:医学部・歯学部志望者こそ避けられない「二重払い」
医学部・歯学部受験は、他学部と比べて
- 出願校数が多い
- 後期もあり合格発表が遅い
- 入学金が高額
という特徴があります。
このため、「第1志望の結果待ちのまま滑り止めに入学金を支払う」ケースが非常に多く、保護者の経済的負担は年々重くなっています。
2025年11月の調査では、こうした状況を改善するための制度がほとんどの大学で導入されていないことが明らかになりました。
- ニュース概要:東京都私立大120校のうち、制度導入はわずか4校
若者グループ「入学金調査プロジェクト」による調査で、東京都内の私立大学120校のうち、「入学金の二重払いを軽減する制度が導入されていたのはわずか4校(3%)でした。
文部科学省が負担軽減を求める通知まで出しているにもかかわらず、大学側の対応は極めて消極的と言えるでしょう。
- そもそも「入学金の二重払い」とは?
医学部受験・歯学部受験で頻発する典型例は次の通りです。
- 第1志望(例:国公立医学部、歯学部)の合格発表が3月上旬
- 私立医学部(歯学部)A大学の入学金締め切りは2月下旬
- 合否が出ていないため、仕方なくA大学に入学金150万円を支払う
- 結果、第1志望に合格 → A大学には入学せず入学金は返ってこない
このように、実際には入学しない大学に高額な入学金を支払うことが「二重払い」です。
- 二重払いが医学部・歯学部受験生に特に重くのしかかる理由
4-1. 医学部・歯学部は出願数が多く“滑り止め”も高額
私立医学部・歯学部は偏差値帯が狭く、安全を考え複数校を受験するのが一般的です。
結果、滑り止め校の入学金も何校分も発生します。
例
- 私立医学部:入学金 150万円前後
- 私立歯学部:入学金 60万円
私立医学部なら3校に入学金を収めただけで 450万円 が即座に消える計算です。
私立医学部、主な大学の入学金
| 大学 | 入学金 |
| 岩手医科大学 | 200万円 |
| 順天堂大学 | 200万円 |
| 埼玉医科大学 | 200万円 |
| 東京女子医科大学 | 200万円 |
| 兵庫医科大学 | 200万円 |
| 昭和医科大学 | 150万円 |
| 東邦大学 | 150万円 |
| 愛知医科大学 | 150万円 |
| 日本医科大学 | 100万円 |
| 東京医科大学 | 100万円 |
| 東京慈恵会医科大学 | 100万円 |
| 大阪医科薬科大学 | 100万円 |
| 関西医科大学 | 100万円 |
私立歯学部、主な大学の入学金
| 大学 | 入学金 |
| 昭和医科大学 | 150万円 |
| 東京歯科大学 | 60万円 |
| 日本歯科大学 | 60万円 |
| 日本大学 | 60万円 |
| 大阪歯科大学 | 60万円 |
4-2. 家庭の経済差が受験チャンスに直結する
経済的に厳しい家庭では、
「合格しても入学金が払えず併願が困難」
というケースが現実に起きています。
これはまさに“受験機会の格差”と呼ばれる問題です。
4-3. 地方受験生ほど不利になる構造
地方の医学部、歯学部志望者は
- 交通費
- 宿泊費
- 複数大学の受験料
- 入学金の納付
が重なるため、都市部の受験生よりも負担が大きくなりがちです。
- 文部科学省が求める“負担軽減策”とは?
2025年6月、文科省は大学に次のような通知を発出しました。
5-1. 入学金の金額抑制
高額すぎる入学金を見直すよう求めました。
5-2. 納付時期を複数回に分ける
「仮入学金」「本入学金」に分けて支払い負担を軽減する方法を検討するよう求めました。
5-3. 一部返金制度
入学辞退者に一定額を返還する仕組みの創設を求めました。
しかし、これらは“努力義務”であり、強制力がないため普及が進んでいません。
- 調査の詳細:導入している私立大はたった「4校」
若者グループの調査で入学金負担軽減を確認された東京都内の大学は以下の4校です。
- 産業能率大学:3月11日までに辞退すれば入学金全額返還
- 大東文化大学
- 嘉悦大学
- 文化学園大学:入学辞退者へ入学金から10万円を除いた額を返金
医学部や歯学部を持つ、残りの都内116校は、現時点で負担軽減策を導入していません。
- 355億円に上る「入学しない受験生からの入学金」—どれだけ異常か?
文科省が公表した平均入学金(約24万円)を基に今回の調査をしたグループが試算すると、
全国の私立大学が「入学しなかった受験生」から得た入学金は355億円、になるとのことです。
- 医学部・歯学部受験での“具体的なリスク”と“よくある失敗例”
8-1. 第1志望の合格発表が遅い
国公立医学部、歯学部は特に合格発表が遅いため、
私立複数校の入学金締め切りが先に来てしまいます。
8-2. 出願数の増加で累積負担が300万円超える例も
私立医学部受験で、第一志望校の前に合格があると当然、入学金を納め「席を確保」します。
その後、志望順位の高い大学に合格すると、そちらにも入学金を納めることになります。
入学金が200万円の2校ですと、400万円の入学金負担が発生します。
8-3. 「医学部専願」のつもりが資金不足で失速
入学金を複数校に支払うことを想定していなかったため「行きたかった医学部に行けなかった」ということが本当に起きるため注意が必要です。
- 受験生・保護者ができる実践的な対策
9-1. 大学のサイトで「返金制度の有無」を必ず確認
今後、医学部や歯学部でも入学金の返金制度を設ける可能性があります。
9-2. 合格発表日と入金締め切りを一覧表にする
Excelなどでスケジュール管理すると混乱しにくくなります。
9-3. 家庭の予算上限を“最初に”決める
医学部受験・歯学部受験は、思わぬ出費が増える可能性があります。
上限設定は非常に重要です。
9-4. 奨学金・教育ローンの情報を前もって調べる
受験期に審査を通せるよう早めの準備をしておいてください。
9-5. 医歯系専門予備校に必ず相談する
大学だけでなく、他学部も含めて併願戦略は合否に直結しますので、具体的にどの大学を受けるのか、メルオンなどの専門予備校に相談するといいでしょう。
- 事前に知っておくべき大学名:返金制度を導入している都内4大学
- 産業能率大学(全額返還)
- 大東文化大学
- 嘉悦大学
- 文化学園大学(一部返金)
※いずれも医学部や歯学部を持っていませんが、今後医学部や歯学部を持つ大学でも導入が発表されるかもしれません。
- 入学金は「入学意思の証明にならない」—制度の本質的な問題
入学金が「本当に入学する人」を選別する機能を果たしていないことも議論されています。
大学側は定員管理を理由に挙げますが、入学金を払っても辞退する例が多い以上、仕組みとして機能していない側面があります。
- 今後どうなる?制度改善への動き
プロジェクト代表・五十嵐さんは「全国一律で入学金の納入期限を3月31日にしてほしい」と訴えています。
とは言え、「入学者を確定させる」と言う点では、なかなか実現は難しいかもしれません。
しかし、文部科学省の言う「複数回に分けての入金」が導入されると、かなり負担軽減にはなると思います。
- まとめ:情報武装が“合格のチャンス”を生む
医学部・歯学部受験は、学力の問題だけでなく入学金を含めた学費も考えておく必要があります。
- 返金制度
- 募集要項
- 納入期限
- 併願計画
これらを十分に考えることで、不要な支出を減らし、受験の幅を広げることができます。

