医学部入試

偏差値40から医学部合格はあるのか? ― 現実と誤解、そして逆転合格のための具体策 ―

目次

  1. 偏差値40から医学部合格は可能なのか
  2. そもそも「偏差値40」とは何を指しているのか
  3. 模試の種類が違えば偏差値は簡単に変わる
  4. 高2・高3・浪人で偏差値の意味はまったく違う
  5. 部活引退後に一気に伸びる受験生は珍しくない
  6. 高3最初が偏差値40台でも私立医学部は狙える
  7. 偏差値が関係ない医学部入試も存在する
  8. 「偏差値40から医学部合格」という言葉の危険性
  9. 偏差値40台から医学部を目指すための具体策
  10. なぜ保護者の言葉が医学部受験を左右するのか
  11. 保護者が言ってはいけない言葉【医学部編】
  12. 保護者がやるべき事[医学部受験編]
  13. 保護者がやらなくていいこと[医学部受験編]
  14. 医学部受験で保護者に求められる本当の役割
  15. まとめ|偏差値よりも重要なもの
  1. 偏差値40から医学部合格は可能なのか

「偏差値40から医学部合格!」

このフレーズを見て、「ここから頑張ればなんとかなる」、「うちの子も医学部に合格出来る」と希望を感じる受験生や保護者は少なくないでしょう。

結論から言えば、「偏差値40台からの医学部合格」は、無いことはありません
ただし同時に、大きな注意が必要です。

なぜなら、「偏差値40」という言葉そのものが、非常に曖昧で、誤解を生みやすいからです。

  1. そもそも「偏差値40」とは何を指しているのか

まず考えてほしいのは、どの模試の、いつの偏差値なのかという点です。

たとえば、東大志望者だけが受験する東大模試を高校2年生が受けた場合、
将来現役で東大に合格する生徒であっても偏差値40台になることは珍しくありません。

これは学力が低いからではなく、母集団のレベルが極端に高いからです。

模試の偏差値は、その模試の受験者のなかでの自分の位置を示すものですから、模試の受験者層が違えば自分の偏差値も当然変わってきます。

東大志望者ですから普通の模試では偏差値70程度はとるでしょう。
偏差値70の人ばかりの模試を受ければ、いつもは偏差値65程度の受験生も最下位になっても不思議ではありません。

一口に「偏差値40」と言っても、その内容は様々です。

  1. 模試の種類が違えば偏差値は簡単に変わる

模試の種類によって、偏差値は大きく変わります。

  • 駿台模試
  • ベネッセ進研模試

この2つでは、同じ受験生でも偏差値が10程度違うことは普通にあります。

駿台模試は学力の高い受験生が多く受ける傾向にあります。
ですから、思うような偏差値はなかなか出ません。

一方、ベネッセ進研模試の受験者のほとんどは高校生で、浪人生はまず受けません。
高校生だけの母集団ですから当然、偏差値は当然高く出がちです。

実は浪人生に自信を付けさせたいと思えば、ベネッセ進研模試を受けさせるという手があります。
いつもに比べて高い偏差値が出ますので、受けた本人は気持ちが前を向きます。

このように、受ける模試によって同じ受験生でも偏差値は変わります。

にもかかわらず、「偏差値40」という数字だけを切り取って学力を判断するのは非常に危険です。

  1. 高2・高3・浪人で偏差値の意味はまったく違う

偏差値は、時期によっても意味がまったく異なります。

  • 高校2年生の偏差値40
  • 高校3年生の偏差値40
  • 浪人時の偏差値40

これらは同じ「40」でも、
中身は完全に別物です。

特に高2段階では、
まだ受験勉強が本格化していない生徒も多く、将来を判断する材料としては不十分です。

高校2年の夏前に受けた模試の偏差値が40台であっても、そこからの頑張りで高校3年の秋、また浪人したとしたら偏差値が大きく伸びるのは当たり前と言えます。

ここでも注意が必要なのは「高校2年生だけを対象にした模試(高2模試)なのか、浪人生を含めた全ての大学受験生を対象にした模試なのか」も忘れないで下さい。

高2模試で、いい偏差値が取れたとしても全ての受験生が競う模試では偏差値は当然下がります。

  1. 部活引退後に一気に伸びる受験生は珍しくない

超進学校に多いのが、

  • 平日は部活中心
  • 勉強は最低限

というタイプの高校生です。

こうした生徒が高3の夏に部活を引退し、本気で勉強に集中し始めると、短期間で成績が一気に伸びることは珍しくありません。

東大生のクイズ王が、「高校生の時はクイズ研究会の活動ばかりやっていて高校では底辺だったけど、マズいと思って勉強を始めたらなんとか東大に現役で合格できた」と話しているのを見たことがあります。

「今まで勉強していなかった」これは裏を返せば、まだ伸びしろが大きいということでもあります。

こういう受験生なら「偏差値40台からの医学部合格」は確かにあるでしょう。

  1. 高3最初が偏差値40台でも私立医学部は狙える

私立医学部入試の特徴は、

  • 国公立より試験科目が少ない
  • 科目を絞って対策できる

という点にあります。

私立医学部入試の試験科目は英語、数学、理科2科目が基本ですが、国公立医学部を受けるとなると、ここに国語と地歴公民が加わります。

特に理系受験生の多くが国語で苦労します。
しかし、私立医学部受験なら国語には触れる必要はありません。

そのため、高3最初の模試で偏差値40台だった受験生が、私立医学部に現役合格するというケースは実際に存在します。

ただし、「何となく頑張る」、「とにかく頑張る」、「偏りなく、満遍なく勉強する」では絶対に届きません。

そこには「私立医学部で合格するために必要なこと」だけに絞った勉強が不可欠です。

「問題そのものは難問揃いと言うわけではないが、試験時間に比べて問題量は多い」という私立医学部入試の特徴を理解した受験勉強は逆転合格には欠かせません。

  1. 偏差値が関係ない医学部入試も存在する

医学部入試の中には、学力試験が無い、あるいは極めて軽い方式もあります。

  • 東邦大学医学部の総合型選抜
  • 東京女子医科大学の学校推薦型選抜

これらの入試では学力試験はありませんので、「偏差値」は合否に直接関係しません。

東邦大学医学部の総合型選抜、学校推薦型選抜の筆記試験は「基礎学力」と「適性試験」になります。

「基礎学力」という名称の試験は小論文の代わりに出題される試験で英語、数学、理科とは全く違う内容の試験です。

また「適性試験」は、受験生の持っている能力、頭の良さを計るような試験で、学力とは無関係です。

ちなみに今年もメルオンから東邦大学医学部総合型選抜に合格者が出ましたが、「基礎学力」、「適性試験」で出る問題に対しての対策が実りました。

逆に言うと、他の受験生は対策が出来ないままですので差を付けられます。

東京女子医科大学の学校推薦型選抜の筆記試験は「思考力試験」と「小論文」になります。
東京女子医科大学の思考力試験は、「もともと持っている能力」を計るような試験で、英語も数学も理科も出ません。

東京女子医科大学推薦入試の配点は公表されていませんが、これまでの合格者を見ていて「合否に最も影響するのは小グループ討論」だと考えています。

今年、メルオンから東京女子医科大学推薦入試を3名が受験しましたが3名全員が合格しました。

その中の1人は通信制高校の生徒でしたが的確な準備で医学部進学を決めました。

医学部入試の中には偏差値と関係のない入試もあります。

  1. 「偏差値40から医学部合格」という言葉の危険性

予備校や塾の「偏差値40台から医学部合格」というフレーズに、安易に飛びつくのは、どうかと思います。

重要なのは、「偏差値40」は

  • どの模試か
  • いつの偏差値か

に加えて

  • 現在の学習量
  • 今後の伸びしろ
  • 志望校と入試方式

これらを冷静に分析することを忘れないで下さい。

  1. 偏差値40台から医学部を目指すための具体策

受験校は「医学部」ではなく「入試方式」から決める

原則、私立医学部一般+推薦・総合型併用

科目を「得点源」と「最低限」に分ける

全部そこそこは、医学部では全落ちします。
合否は総合点で決まりますので、総合点で合格点を取るための科目ごとの戦略を考えて下さい。

例えば、「英語で稼げるから数学は多少落としてもいい」といった考え方です。

最初の3か月は基礎しかやらない

応用問題・難問は一切不要です。
「医学部は難しい」という意識から「難し目の問題」をやりたくなるでしょうが、基本問題を落としていては勝負になりません。

基礎からの積み上げはどうしても必要です。

模試は判定ではなく教材

偏差値は見なくて構いません。
大切なことは、現在の自分は「何が出来て、何が出来ないのか」を知って、出来なければならない問題を模試を使って再確認することです。

合格最低点を逆算する

満点ではなく、合格点を超える設計をします。
それも「全科目合格点を超える」ではなく、「合計点で合格点を超える」です。

推薦・総合型は必ず検討

医学部の総合型選抜や学校推薦型選抜は大学によって試験内容が様々です。
まずは自分に合った推薦・総合型は無いか調べて下さい。
「自分ではなかなか探せない」と言うことであれば、メルオンにご相談ください。
過去問が公表されていなくても、完璧に把握しています。

準備は早ければ早いほど有利です。

勉強時間より集中密度

逆転合格者は、勉強の質が異常に高い。
医学部合格に必要なことに集中しての勉強が大切です。

  1. なぜ保護者の関わり方が医学部受験を左右するのか

医学部受験は、

  • 長期戦
  • 不合格が前提とも言える難関中の難関
  • 強烈なプレッシャー

という、精神的負荷が極めて大きい受験です。

このとき、家庭での空気・会話・距離感は、学力同様に結果を左右します。

少なくない失敗例は、「勉強のやり方」ではなく親の関わり方のズレから始まります。

  1. 保護者が言ってはいけない言葉【医学部編】
  • 「そんな成績で医学部なんて無理」
  • 「〇〇大学なら行けるんじゃない?」
  • 「努力が足りないんじゃない?」
  • 「やる気あるの?」
  • 「医学部はお金がかかるんだから」
  • 「浪人は絶対ダメ」
  • 「もっと勉強してる子はいくらでもいる」
  • 「あなたのためを思って言ってる」

これらはすべて、悪気がなくても医学部受験では致命傷になります。

医学部を目指す受験生は「合格出来るんだろうか?」という不安の中で、もがいています。
その気持ちを萎えさせるような言葉は謹んで下さい。

  1. 保護者がやるべきこと【医学部受験編】

ここからが、多くの保護者が一番知りたい部分です。

勉強内容に口出ししないが、環境は整える

  • 静かな生活環境
  • 生活リズムの安定
  • 食事・睡眠のサポート

「何を勉強しているか」ではなく「勉強できる状態か」を見る

結果より「取り組み方」を見る

  • 模試の偏差値
  • 合格可能性判定

よりも、

  • 計画通り進んでいるか
  • 自分で修正できているか

を見ることで、受験生は安心して挑戦できます。

不安をぶつけるのではなく、受け止める

受験生の不安は、

  • 甘え
  • 弱さ

ではありません。

医学部受験では正常反応です。

正論で返さない
解決策を急がないで まず聞く

これだけで、受験生のメンタルは大きく安定します。

お金の話は「戦略」として冷静に共有する

  • 感情的に言わない
  • プレッシャーとして使わない
  • 選択肢を狭めない

お金の話は脅しではなく、情報共有です。

最後に「信じている」と伝える

これは精神論ではありません。

  • 失敗しても味方である
  • 結果で評価しない

この安心感がある受験生ほど、「やれるだけやろう」と、最後まで粘り強く戦えます。

  1. 保護者がやらなくていいこと【医学部受験編】

偏差値・判定に一喜一憂すること

親が動揺すると、受験生は倍以上動揺します。

他人と比較すること

「〇〇くんは」、「〇〇さんのお子さんは」

百害あって一利なしです。

塾・予備校の宣伝文句を鵜呑みにすること

「偏差値40から医学部合格」

必ず前提条件があります。
そこを確認しないのは危険です。

親の価値観を押しつけること

  • 現役至上主義
  • 国公立信仰
  • 浪人=失敗

医学部受験では、すべて通用しません。
「自分はこうやって上手く行った」という成功体験の押しつけも控えた方がいいでしょう。
「時代が違う」、「自分には、そのやり方は合わない」と反発する恐れがあります。
そうなると親子のコミュニケーションは途絶えます。

「正しいこと」を言えば伝わると思うこと

正論は、追い詰められている受験生には凶器になることがあります。
「これを言うと受験生はどう感じるか」も考えてみて下さい。

  1. 医学部受験で保護者に求められる本当の役割

保護者の役割は、

  • 指導者
  • 管理者
  • 評価者

ではありません。

安全基地です。

  • 失敗しても戻れる
  • 本音を言っても否定されない
  • 結果で価値が変わらない

この場所がある受験生だけが、最後まで戦い抜けます。

  1. まとめ|偏差値よりも、戦略と家庭環境

偏差値40台から医学部合格は、

✔ 不可能ではない
✔ ただし条件付き
✔ 戦略と家庭環境がすべて

そしてもう一つ、決定的に重要なのが保護者の関わり方です。

偏差値云々の前に、家庭の空気を整える。

それが、医学部合格への本当のスタートラインです。

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