目次
- はじめに|「正しい勉強法」をやらせているのに成績が伸びない理由
- 佐藤ママという成功例が生んだ大きな誤解
- 東大生の勉強法を真似すれば成績は上がる、という思い込み
- 成績が伸びない本当の原因① そもそもの能力差を無視している
- 成績が伸びない本当の原因② 本人のやる気は外から作れない
- 成績が伸びない本当の原因③ 環境が違えば結果も変わる
- 東大生の勉強法は「東大生だから」成立している
- 普通の高校生が東大生の勉強法を真似すると何が起きるのか
- 親が勉強法を押し付けるほど、子供は伸びなくなる
- では親は何をすべきか|正しい受験サポートの考え方
- まとめ|佐藤ママ式を真似する前に考えてほしいこと
- はじめに|「正しい勉強法」をやらせているのに成績が伸びない理由
「東大生はこうやって勉強していた」「合格者の体験談に書いてあった方法をやらせている」
それなのに、成績は伸びない。むしろ、以前よりやる気がなくなっている。
こうした相談は、受験期の家庭では珍しくありません。
そして多くの親は、こう結論づけてしまいます。
「やり方は正しいはず。足りないのは本人の努力だけ」
しかし実際には、その“正しいはずの勉強法”こそが、成績が伸びない原因になっていることが少なくありません。
- 佐藤ママという成功例が生んだ大きな誤解
この話題で必ず名前が挙がるのが、「佐藤ママ」です。
4人の子供全員を全ての大学受験で最難関とされる東大理Ⅲに合格・入学させた母親として知られ、その子育てや勉強管理の方法は、多くの親に強い印象を残しました。
ここで起きたのが、次のような思考です。
- 佐藤ママのやり方で理Ⅲに合格できた
- ならば、同じことをすればうちの子もいけるはず
- ダメでも、少なくとも難関大・医学部には届くだろう
一見、合理的に見えます。
しかし、ここには大きな飛躍があります。
「成功した家庭のやり方」と「自分の家庭で再現できるやり方」は、全く別物だからです。
- 東大生の勉強法を真似すれば成績は上がる、という思い込み
佐藤ママのエピソードも、東大生の勉強法も、共通しているのは「結果が出たあとに語られている」という点です。
結果が出たあとだからこそ、
- うまくいった部分だけが強調され
- もともとの能力や性格は語られず
- 環境の特殊性も軽視される
こうして「誰でも再現できそうな成功物語」に見えてしまいます。
しかし現実には、その勉強法が成立したのは「その子だから」である可能性が非常に高いのです。
大谷翔平と同じ育て方、同じトレーニングをやったとしても、誰もが大リーガーになれるわけではなく、プロ野球選手になれるわけでもないことは理解できるのではないでしょうか?
しかし、大学受験となると生まれ持った能力、幼少期に身に付けた能力、育った環境、本人の性格といったことは、忘れ去られる傾向にあります。
ここを見落とすと、悲劇が始まります。
- 成績が伸びない本当の原因① そもそもの能力差を無視している
理Ⅲに合格する層、東大に合格する層には、明確な特徴があります。
- 理解が速い
- 忘れにくい
- 抽象的な話を苦にしない
- 長時間集中できる
これは努力の結果というより、個性・特性の差です。
同じ勉強法を普通の高校生に当てはめれば、
- 量だけ増えて中身が伴わない
- できている前提で進んでしまう
- 積み残しが増える
という事態になりがちです。
これは努力不足ではなく、設計そのものの間違いなのです。
ある東大卒業生が「英単語は書いて覚えろと言われるが、自分は見たら覚えられるので書いて覚えるなんてことに時間を使うのは無駄だと思う」と話してくれました。
見ただけで覚えられる人の話を真に受けて、それをマネしても普通の受験生は英単語を覚えられないでしょう。
東京慈恵会医科大学の学生は「女子大の付属高校にいて内部進学で女子大に行くと思っていたので受験勉強はしたことが無かった。10月くらいに突然、医学部に行きたいと思い、そこから受験勉強を始めた。部屋から時計を無くし窓にはカーテンを引いたまま勉強をやった。外の様子や時計を見て、そろそろご飯とか寝なきゃとか考えないように勉強に没頭した。お風呂に入っている時も食事の時も、直前の内容を頭の中で反復していた。少なくとも起きている時間で勉強をしていない時間は無かった。」と話してくれました。
医学部を目指す受験生でも、これほど勉強に集中できる受験生は、めったにいないでしょう。
同じことをやろうとしても出来なくて、自己嫌悪に陥るのではないでしょうか?
- 成績が伸びない本当の原因② 本人のやる気は外から作れない
佐藤ママの話を聞いて、多くの親がこう思います。
「親が適切に、上手に管理すれば、子供は伸びる」
「東大理3は無理でも、私立医学部なら行けるだろう」
しかし、やる気は管理では生まれません。
- 目標が親のもの
- 勉強法も親が決める
- 失敗すると否定される
この状態では、子供は「親が考える正しい勉強法をやること」だけを求められます。
自分で考える余地がなくなり、やる気はむしろ下がります。
親が医師で、「子どもにも医師をやらせたい」、と思う親も少なくありません。
こういった親の中には「親が主導の医学部受験」となるケースが少なくありません。
受験生本人も自分の意思で「医師になりたい」と思っているのならいいのですが、親から言われて、「医師になりたい」という強い意思を持たないまま勉強をやっていると、医学部受験は不完全燃焼のまま終わってしまいがちです。
親が医学部合格に向け受験勉強の全てを準備して子どもにそれをやらせようとしても、本人にしてみたら自分で考えて自分で決めたことではありませんので、「何が何でも」という気持は起こりにくいものです。
医学部合格に向け受験勉強をやるのは受験生本人です。
本人がやる気にならなければ、勉強は上手く進みません。
- 成績が伸びない本当の原因③ 環境が違えば結果も変わる
佐藤ママの家庭と、一般的な家庭では、
- 親の教育知識
- 使える時間
- 子供の気質
- 家庭内の会話
- 父親・母親の役割
あらゆる点が違います。
それを無視して「やり方」だけ真似ても、同じ結果にはなりません。
- 東大生の勉強法は「東大生だから」成立している
東大生の勉強法は、
- 素早い理解
- 少ない復習
- 高速周回
- 長時間集中学習
が前提になっていることが多く見られます。
これは、できる人がやるから成立する戦略です。
医学部を目指す普通の高校生が真似すれば、
- 理解が追いつかない
- 自信を失う
- 勉強が嫌いになる
という結果になりやすいものです。
- 医学部を目指す普通の高校生が東大生の勉強法を真似すると何が起きるのか
よくある流れはこうです。
- 成功例を信じて導入
- 最初は頑張る
- 結果が出ない
- 親が「やり方は合っている」と言う
- 子供が「自分が悪い」と思う
- 「自分には医学部は無理」と思って、やる気を無くす
この構造が、子供を一番追い詰めます。
- 親が勉強法を押し付けるほど、子供は伸びなくなる
医学部受験の世界では、「本人以上に親が一生懸命」となる家庭が少なくありません。
子供のことを思う親の善意(善意だと思っている)が、
- 自立を奪い
- 試行錯誤を奪い
- 失敗を許さない空気を作る
ことがあります。
これは医学部受験において、致命的です。
- では親は何をすべきか|正しい受験サポートの考え方
親がやるべきことは、
- 勉強法を決めることではなく
- 学べる環境を整えること
です。
そして、子供の現在地に合った方法を一緒に考えること。
成功例は「参考」にとどめる。
「唯一の正解」にしないことを忘れないで下さい。
- まとめ|佐藤ママ式を真似する前に考えてほしいこと
佐藤ママの子育ては、否定されるものではありません。
一つの素晴らしい成功例です。
しかし、
- 能力
- やる気
- 環境
が違えば、同じ結果にはなりません。
東大生の勉強法も同じです。
真似るべきなのは方法ではなく、「わが子に合う形を考え続けた姿勢」。
そこに目を向けられたとき、親の関わり方は、子供を追い詰めるものではなく、支えるものに変わります。
親が自分の受験で上手く行った経験を子供にもやらせようと思っても、別人格であり、周囲の環境や受験勉強への考え方、取り組み方が親世代とは違います。
親はあくまで医学部合格に立ち向かう受験生の最大の理解者、支援者であって下さい。

