医学部入試

私立医学部専願者が共通テストを受けてはいけない理由

私立医学部を第一志望、あるいは専願で目指している受験生に対して、私は一貫してこう伝えています。

「共通テストは受けなくていい。むしろ受けない方がいい」

それにもかかわらず、多くの塾や予備校では
「合格のチャンスを増やすために共通テストも受けましょう」
と指導されているのが現実です。

しかし、これは私立医学部受験の本質を理解していないアドバイスです。
以下、その理由を一つずつ、具体的なデータとともに解説します。

目次

私立医学部の共通テスト利用入試は「ボーダーが異常に高い」

私立医学部の問題と共通テストは「別物」|練習にもならない

③ 2日間で失う勉強時間は、私立医学部受験では致命的

自信喪失・体調不良という「見えないリスク」

「チャンスを増やすために受けろ」という指導の危うさ

私立医学部専願者がやるべきことは明確

 

私立医学部の共通テスト利用入試は「ボーダーが異常に高い」

まず最大の理由がこれです。

私立医学部の共通テスト利用入試は、名前は「利用」でも、実態は超上位層専用です。
旺文社のパスナビに掲載されている共通テストのボーダーライン得点率で、具体的なボーダーラインを見てみましょう。

  • 順天堂大学医学部:約90%
  • 帝京大学医学部:約90%
  • 関西医科大学医学部:約89%
  • 大阪医科薬科大学医学部:約89%

90%前後というのは、共通テスト受験者全体の中でも最上位数%です。

一方で、国立医学部を見てみると、

  • 旭川医科大学医学部医学科:約79%
  • 弘前大学医学部医学科:約79%
  • 秋田大学医学部医学科:約80%
  • 福井大学医学部医学科:約80%
  • 富山大学医学部医学科:約80%
  • 高知大学医学部医学科:約80%

 

国立大学医学部医学科であっても、共通テストボーダーライン得点率が80%を下回る大学や80%程度の大学は存在します

つまり、合否判定に使われる科目などの違いはあるものの、

「私立医学部の共通テスト利用」は
「国立医学部よりも高得点を要求されるケースが普通」

なのです。

これで私立医学部の共通テスト利用入試で合格を狙うことが、どれほど非現実的かは明らかでしょう。

私立医学部の共通テスト利用入試出願者には、国公立大学医学部志望者が多くなります。

国公立医学部志望ですから当然、共通テストは受けるわけです。
私立医学部の併願を考えた時、共通テストが学力試験となりますので共通テスト利用入試は国公立志望者にとっては非常に負担の少ない医学部入試となります。

ちなみに、順天堂大学医学部の共通テスト利用入試前期の募集人員は10名で、昨年は683名が志願して、志願倍率は68.3倍となりました。

帝京大学医学部の共通テスト利用入試は募集人員8名に対し、1084名が受験しましたので倍率は135.5倍でした。

私立医学部の共通テスト利用入試の募集人員は非常に少なく、このこともボーダーラインを押し上げる1つの理由になっています。

私立医学部の問題と共通テストは「別物」練習にもならない

次に大きな問題が、試験の性質の違いです。

  • 共通テストの特徴
  • 情報処理量が多い
  • 問題文が長く読解力が必要
  • 誘導に乗る力が重要
  • 私立医学部一般入試の特徴
  • 知識の深さ・正確さ
  • 短時間での処理
  • 未知の問題ではなく既知の問題

共通テストと私立医学部入試、この2つは求められる能力がまったく違います

共通テスト対策をどれだけやっても、
私立医学部の英語・数学・理科の得点力が
直接的に伸びることはほぼありません。

「共通テストは基礎固めになる」という意見もありますが、
それは医学部を目指さない一般論です。

私立医学部レベルに到達している受験生にとって、
共通テスト対策は練習にもならず、時間だけを奪う作業になりがちです。

③ 2日間で失う勉強時間は、私立医学部受験では致命的

共通テストは本試験が、私立医学部一般選抜直前に2日間あります。

しかし、実際に失われる時間はそれだけではありません。

  • 直前の切り替え期間
  • 試験当日の移動・待機
  • 試験後の疲労・切り替えロス

これらを含めると、少なくとも3〜4日分の学習効率が大きく落ちます。

私立医学部受験において、1月中旬〜下旬は最後の仕上げの最重要時期です。

この時期に、

  • 過去問演習
  • 苦手分野の最終修正
  • 得点源科目の完成度アップ

を止めてまで受ける試験が、私立医学部一般選抜の合格にほぼ結びつかない共通テストであるなら、それは「もったいない」どころではありません。

自信喪失・体調不良という「見えないリスク」

共通テストを受けることで起こりやすいのが、

  • 思ったより点が取れない
  • 周囲の受験生との比較
  • 自己採点による動揺
  • 過度の緊張からの疲れ
  • 行ったことの無い場所で多くの知らない受験生に囲まれることによる疲れ

です。

私立医学部受験は、メンタルと体調管理が合否を左右する試験です。

共通テストの結果で自信を失い、その後の私立医学部入試に悪影響が出るケースを、私は見てきました。

また、1月の長時間試験・寒さ・移動によって体調を崩し、
本命の私立医学部入試に影響が出るのは本末転倒です。

「チャンスを増やすために受けろ」という指導の危うさ

塾や予備校がよく言う言葉があります。

「共通テストを受けておけば、ワンチャンありますよ」

しかし、冷静に考えてください。

  • 90%程度の得点率が必要
  • 定員はごく少数
  • 全国トップ層が集中
  • 共通テスト受験前に出願

これを「チャンス」と呼ぶのは、
医学部受験の現実を見ていないと言わざるを得ません。

私立医学部の共通テスト利用入試の出願は、共通テスト前に出願します。
つまり、「共通テストの結果を見てから出願する」わけにはいかないのです。
共通テストを受験する前ですから、「ひょっとすると奇跡が起きるかも」と受験生が考えることは非難できません。

そんな状況で塾・予備校が「チャンスは多い方がいい」と共通テスト利用入試のために共通テストを受験することを勧めることは、私は「いかがなものか」と思います。

むしろこれは、

  • 共通テスト対策の受講を増やしたい

という、塾・予備校側の都合で語られているケースが多いのではないかと感じます。

非常にハードルの高い共通テスト利用入試の1次試験において、合格出来ないことが続くと、一般選抜に向かう気持が萎えてしまいがちです。

私立医学部専願者に必要なのは、
確率の低いチャンスを増やすことではなく、
確率の高い合格ルートを太くすること
です。

私立医学部専願者がやるべきことは明確

結論はシンプルです。

私立医学部専願者がやるべきことは、
私立医学部の一般入試に100%集中すること。

  • 大学別の出題傾向分析
  • 科目ごとの得点戦略
  • 合格最低点から逆算した学習

これこそが、合格への最短ルートです。

共通テストは、「受けられるから受ける試験」ではありません。

自分の志望と戦略に合わない試験は、受けない勇気もまた、受験戦略の一部なのです。

私立医学部受験は、
「全部やる人」ではなく、「やらないことを正しく選べた人」が合格します。
受験生が使うことの出来る時間は限られています。
やりたいこと全てをやっている時間はありません。

「やらないことを正しく選択する」ことは医学部合格のために非常に重要なことです。

共通テストを受けないという選択は、決して逃げではありません。
それは、私立医学部合格に本気で向き合った人だけができる、
合理的な判断です。

自分は共通テストで、「国立大学医学部のボーダーライン得点率を超える得点率を出せるのか」を冷静に考えてみて下さい。

共通テストで90%程度の得点率を出せる受験生なら、普通に私立医学部一般選抜で合格点を取れると思います。

高校によっては生徒全員に共通テストを受けさせる高校もあるようですが、これも「高校全体の集中力を高める」ためのような気がします。