私立医学部2次試験で不合格になる受験生が多い理由
私立医学部の入試では、多くの大学で2次試験として小論文と面接が課されます。
学力試験を突破した受験生にとって、この2次試験は「最後の関門」です。
しかし現実には、
学力的には十分合格圏内にいながら、2次試験で不合格になる受験生が毎年一定数存在します。
その原因の多くは、
能力不足ではありません。
対策の方向性がズレていることです。
そして、そのズレを生み出しているのが
「医学部だから、こうだろう」
という想像に基づいた指導です。
目次
- 医学部小論文は「内容」で評価されない
- 医学部の小論文で「内容が素晴らしいから合格」は存在しない
- 「書けていない」は、即、不合格につながる
- 医学部小論文の肝は「指定字数を書き切ること」
- 医学部面接について最も多い誤解
- 医学部面接の本当の目的
- 面接が良いから合格はないが、面接が悪いと不合格はある
- 医学部のグループ面接・討論は「比較」の試験
- 医学部2次試験で親が果たす役割
- 親がやりがちな「善意の介入」が危険な理由
- 親が「内容」に口出しするほど不合格に近づく
- 面接で「親の価値観」が透けて見える瞬間
- 親がやるべきことは「正しい理解」と「環境づくり」
- 親の最大の役割は「正しい指導者につなぐこと」
- 親の関わり方ひとつで、結果は大きく変わる
- 医学部2次試験に本当に必要な対策とは
1,医学部小論文は「内容」で評価されない
医学部小論文というと、
- 医療倫理について深く書く
- 医師としての理想像を語る
- 社会問題に対して立派な意見を述べる
こうしたことが評価されると考える人が多いかもしれません。
しかし、これは医学部小論文の実態とは大きく異なります。
以前、久留米大学医学部の教授で副学長を務められていた先生と、小論文の評価について直接お話しする機会がありました。
この方は非常にざっくばらんな方で、何度も一緒に食事をして人間関係が出来上がっていました。
小論文の評価方法について、はっきりとこう言われました。
「小論文の評価では、内容は見ていない。医学部教員は国語の先生じゃないから。」
当時、こう言われて私も驚きましたがこの言葉は、多くの受験生や指導者が抱いているイメージを根底から覆すものです。
2,医学部の小論文で「内容が素晴らしいから合格」は存在しない
もちろん、これは「何を書いてもいい」という意味ではありません。
しかし、少なくとも
- 内容が感動的だったから
- 医学的に立派だったから
- 深い医療知識を持っていることが分かったから
- 他の受験生より深いことを書いたから
といった理由で合格が決まることはない、というのが現実です。
配点が設定されている大学であっても、
実際に差がつくのは
- 漢字の書き取り
- 課題文の理解
- 課題文の要約
といった国語的な部分で、小論文部分では差が付きにくい(付けにくい)のが医学部小論文の現実です。
3,「書けていない」は即、不合格につながる
一方で、医学部小論文には明確な「不合格ライン」が存在します。
それが、
「書けていない」答案です。
- 指定字数に大きく足りない
- 明らかに途中で終わっている
- 文章として成立していない
- 設問にほとんど答えていない
- 小論文ではなく作文になっている
こうした答案は、内容以前の問題として
不合格に直結します。
つまり、
内容が良いから合格はないが
書けていないから不合格はある
これが医学部小論文の本質です。
4,医学部小論文の肝は「指定字数を書き切ること」
では、医学部小論文で最も重要なことは何か。
それは、
指定された字数を、最後まで書き切ることです。
これは才能ではありません。
完全に訓練の問題です。
実際、東京慈恵会医科大学では
90分で1200字という長文小論文が課されます。
東京慈恵会医科大学の教員が学生のレポートがお粗末すぎると危機感を抱いたことから小論文で1200字と言う字数を課し、学力に加えしっかりとした文章を書ける受験生を入学させようとしました。
この字数を、
制限時間内に、
構成を崩さず、
最後まで書き切る。
これは、事前に十分な練習をしていなければ、
簡単にできることではありません。
ちなみに東京慈恵会医科大学では小論文の過去問を公表していません。
そこでメルオンでは東京慈恵会医科大学の2次試験受験者たちからの受験者報告を基に「東京慈恵会医科大学小論文練習問題」を作りました。
ご希望される方はメルオンのホームページ、資料請求から「慈恵小論文希望」とご記入の上、お申込みください。
お申込みは こちらから
近畿大学医学部の小論文で「混合医療」について書かせる問題が出たことがあります。
混合医療とは、保険が適用される保険診療と適用されない自由診療を併用することを言いますが、どのような医療のことなのか分からない受験生が2種類のワクチンを混合して接種する医療だと考え、それに基づいて小論文を書きました。
内容は完全にピント外れでしたが、文章全体の構成や指定字数はきっちりしました。
結果は「合格」でした。
医学部小論文対策とは、
「中身を立派にすること」ではなく、
「書き切る体力と型を身につけること」なのです。
大手予備校や医学部専門予備校の小論文の先生は、小論文の先生だからこそ「より良い内容の小論文」を書かせようとします。
しかし、医学部で合格するために必要なのは、「素晴らしい内容」ではなく「知らないことでも書き切る力」です。
出題範囲は無く、どんな問題が出ても文句の言えない小論文では、「知らないこと」が出る可能性は十分にあります。
「知らないから書けない」ではなく、「知らなくても書き切る」ことが医学部合格に結びつきます。
1次試験に合格した後は別ですが、小論文は時間を掛けるところではありません。
時間を掛けるべきは英語、数学、理科です。
5,医学部面接について最も多い誤解
次に、面接です。
医学部の面接について、指導現場で最もよく聞く説明が、
医学部の面接は、「将来、良き医師になれる人材かどうかを見るため」に行う、
というものです。
しかし、この説明は
医学部関係者と直接話したことがない人の発想です。
「医学部だから、きっとそうだろう」
という想像で作られた説明にすぎません。
そして、受験生も保護者の方も、「そうだよね」と考えてしまいます。
医学部関係者と頻繁に会っていれば、これは完全に間違った考えだということが分かります。
6,医学部面接の本当の目的
医学部面接の目的は、
プラス評価を与えることではありません。
本当の目的は、
- 明らかに問題のある受験生を落とす
- 医学部教育に耐えられない可能性が高い人を除外する
- 将来、大学や病院にリスクをもたらす人物を避ける
こうしたマイナス要因の確認です。
いくら学力試験の成績が良くても、明らかに問題のある受験生を入学させるわけには行きません。
ですから「面接試験の評価が低い場合は学力試験の成績に関わらず不合格とする」となるのです。
ある大学医学部の方から、問題を起こした学生がいると必ず、「どうしてこんな学生を入れたんだ。誰が面接をやったんだ」と声が上がると聞きました。
「面接が素晴らしいから合格」はありませんが、「面接がダメだから不合格」はあります。
医学部の面接官はこういう答えを期待しているだろうと想像して、
「医師への強い意欲」、「理想の医師像」、「現在の医療への問題意識」を立派に語る練習ばかりしても、評価にはつながりません。
「医学部の面接は何のために行うのか?」、「医学部の面接官はどういった答えを期待しているのか?」これについて十分に理解していますが、貴重なノウハウになりますので、ここでは控えます。
7,面接が良いから合格はないが、面接が悪いと不合格はある
最近では、入試要項に
「面接の評価が低い場合は、学力試験の得点に関わらず不合格とする」
と明記する私立医学部が増えています。
これは非常に重要なポイントです。
- 面接が素晴らしい → 合格しない
- 面接が悪い → 即不合格
医学部面接は、
足切り試験としての性格が非常に強いのです。
多浪生や再受験生は面接の準備でどういったことを考えればいいのか?
高校の成績が良くない場合はどう答えたらいいのか?
高校で欠席が多い場合、どう答えたらいいのか?
部活や委員会活動など何もやっていないが、どう答えたらいいのか?
親は医療関係者ではないが大丈夫か?
こういったことは全て、「医学部面接官の本音と期待する答え」が分かっていれば全く問題ありません。
8,医学部のグループ面接・討論は「比較」の試験
医学部のグループ面接やグループ討論、は、
他の受験生と比較するために行われます。
フィギュアスケートや体操などの採点競技を考えて下さい。
厳密な基準を作っても、1人ひとりの採点は非常に難しいものがあるでしょう。
「採点がおかしい」という声はいつあっても不思議ではありません。
しかし、もし全員が同時に演技をしたらどうでしょう。
競技中に比較することが出来ますので、採点は明快になるのではないでしょうか?
医学部のグループ面接、グループ討論も同じです。
北里大学医学部の学校推薦型選抜(推薦入試)ではグループ討論を課します。
北里大学の方に「受験生を比較して、面接ではっきりと差を付けるため」と説明を受けています。
北里大学のグループ討論では男女を分けてグループを作ります。
「女子と男子を同じグループにすると、どうしても男子は女子に押されてしまうので、男子と女子を分ける」とのことでした。
きちんとした評価が出来るように大学も考えています。
医学部のグループ面接、グループ討論で面接官が見る点は
- 協調性があるか
- 集団の中で浮かないか
- 他人の話を正確に理解出来ているか
- 思い込みで話していないか
- 話の流れを分かっているか
これらは、
事前に形式を理解し慣れているかどうか、面接官はどこを見ているのかを分かっているかどうかで、結果が大きく変わります。
9,医学部2次試験で親が果たすべき役割
医学部受験の2次試験、とくに小論文や面接では、
親の関わり方が結果に影響するケースが少なくありません。
それは、親が直接試験を受けるわけではないからこそ、
影響が「見えにくい形」で現れるためです。
実際、2次試験で不合格になる受験生を見ていると、
本人の出来以前に、
家庭内で刷り込まれた考え方や価値観が足を引っ張っていると感じる場面が多々あります。
10,親がやりがちな「善意の介入」が危険な理由
親としては、
- 医師を目指す受験生として立派な考えを持ってほしい
- 面接で評価される受け答えをしてほしい
- 小論文で良い内容を書いてほしい
そう思うのは当然です。
しかし、この「善意」が、
医学部2次試験においては逆効果になることがあります。
たとえば、
- 「もっと医師としての使命感を書いた方がいいんじゃない?」
- 「患者さんの気持ちを大切にする姿勢を強調しなさい」
- 「その答えだと、医師として浅く見られない?」
こうした言葉は、一見もっともらしく聞こえますが、
医学部の評価軸とはズレていることがほとんどです。
その結果、受験生の小論文や面接回答は、
不自然で、過剰で、現実味のないものになっていきます。
11,親が「内容」に口出しするほど不合格に近づく
前段で述べた通り、
医学部小論文は「内容の良い小論文だから合格」となる試験ではありません。
それにもかかわらず、
- 内容が薄いのではないか
- もっと立派なことを書かせた方がいいのではないか
と親が介入すればするほど、
受験生は
- 何を書けばいいのか分からなくなり
- 字数が埋まらなくなり
- 書くスピードが落ち
- 本番で書き切れなくなる
という悪循環に陥ります。
医学部小論文で最も危険なのは、
途中で筆が止まることです。
親が内容に踏み込むほど、
このリスクは高まります。
12,面接で「親の価値観」が透けて見える瞬間
医学部面接では、受験生本人だけでなく、
家庭環境や育てられ方も、ある程度見透かされます。
これは、
「親の職業」や「家庭の方針」を直接問われるという意味ではありません。
- 借り物の言葉で話していないか
- 自分の言葉として消化できているか
- 年齢に不釣り合いな完成度になっていないか
こうした点から、
大人が作った回答かどうかは、意外なほど伝わります。
特に、
「なぜ医師になりたいのか」
「どんな医師になりたいのか」
といった質問で、
親の価値観をそのままなぞったような回答が出た場合、
評価は下がります。
13,親がやるべきことは「正しい理解」と「環境づくり」
では、親は何もしない方がいいのか。
決してそうではありません。
医学部受験において、
親が果たすべき最も重要な役割は、
医学部2次試験の評価軸を正しく理解すること
そして
子どもが余計な不安を抱えずに準備できる環境を整えること
です。
具体的には、
- 小論文は「内容で勝負する試験ではない」ことを理解する
- 面接は加点ではなく減点回避の試験だと知る
- 想像や噂話を子どもに伝えない
- 指導者の選択を親が冷静に行う
これらが、親にしかできない重要な役割です。
14,親の最大の役割は「正しい指導者につなぐこと」
医学部小論文や面接は、
家庭内でどうにかなるものではありません。
最も大切なのは、
医学部の本音を理解している指導者に任せることです。
- 医学部関係者と直接話しているか
- 想像ではなく実態に基づいて指導しているか
- 不合格要因を作らない対策をしているか
これを見極め、
子どもを正しい指導につなぐこと。
これこそが、
医学部2次試験における親の最大の役割です。
15,親の関わり方ひとつで、結果は大きく変わる
医学部2次試験では、
- 親が前に出すぎてもいけない
- 何も知らずに放置してもいけない
という、非常に難しい立場に置かれます。
だからこそ必要なのは、
出しゃばらず、しかし理解して支える姿勢です。
親の関わり方ひとつで、
本来合格できたはずの受験生が不合格になることもあれば、
逆に、不安なく実力を発揮できることもあります。
医学部2次試験は、
受験生本人だけでなく、
親の理解力も試されている試験なのかもしれません。
16,医学部2次試験に本当に必要な対策とは
医学部小論文も医学部面接も、
ヒーローになる場ではありません。
求められているのは、
- 書き切れていること
- 破綻していないこと
- 自分の言葉で面接官が満足する答えを話せること
- 様々な面で問題がないこと
ただそれだけです。
「医学部だからこう書け」
「医学部だからこう答えろ」
このような想像に基づく指導では、
医学部の評価軸とズレてしまいます。
医学部の本音を理解した指導者による対策こそが、
2次試験を突破するために欠かせないものなのです。

